■シマケン・佐野晶哉は必要なかった?

 もともと、りん(見上)とシマケン(佐野)の恋心がぼんやりしていたので、シマケンが消えた部屋のりんの姿は、涙のシーンにも関わらず、悲しさは少しも感じられなかった。かつてシマケンはりんの娘・環のおじさんになると宣言し、りんのことは吹っ切った様子だったが、結局、最後まで未練たらたら。派遣看護が軌道に乗ってきたタイミングだけに、この退場に歓迎の声が多いのは当然だろう。

 恋か仕事かの選択を迫られ、仕事を選ぶ展開は朝ドラあるあるで、それによってヒロインの人生を浮き立たせる効果がある。しかし、りんは普通に仕事に一直線だし、恋人同士なのかどうか曖昧な関係では、そもそもその効果もない。ヒロインを見守る立場として恋人が機能する場合もあるが、それなら団子屋のチュウ(若林時英/26)がその役目を果たしている。なんのためにシマケン出ていたのか、疑問だ。

 史実では、大関は獄中の社会運動家・木下尚江から求婚されるも、彼を紹介した相馬愛蔵(チュウのモデルとされる新宿中村屋の創業者)に反対されて諦めている。一方で木下は、出獄して東京看護婦会の若い受付と結婚するなど、けっこうドラマチックなのだが、朝ドラとしては刺激的なので採用されなかったのだろう。

 その代わりに、りんと結ばれることなく、物語の邪魔もしない程度の恋愛をする相手として、シマケンを配置したと思われるが、結果的にただのノイズになってしまった。恋愛要素としては、直美(上坂)と軍人・小川吾郎(28)の結婚があるのだから、正直、シマケンはいなくてもよかったのではないだろうか。

 第22週では、いよいよ日清戦争が始まる。予告によると、直美が妊娠するも小川は出征。多江(生田絵梨花/29)が志願して働いている、広島の陸軍予備病院を捨松(多部未華子/37)が慰問するなど、激動の時代の中で、緊迫した物語が展開されそうだ。りんと直美の奮闘を見守りたい。
(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。