現役時代は阪神タイガースで2度のリーグ制覇、引退後は阪神や日本代表で指導者を務めてきた矢野燿大が“マスク越しの視点”から現在の球界を徹底解説。ここでしか聞けないレジェンドOBの“生の声”を本サイト編集部がお届けする。
こと打撃センスに関して、タイガースのチームメイトの誰もが「天才的なバッティングセンスの持ち主」と評価するのが高寺望夢(たかてら・のぞむ)です。不動の4番を務めるテル(佐藤輝明)も、高寺のコンタクト能力(ミート力)については「エグイ!」とまで言っています。
テルと高寺は大卒、高卒の違いはありますが、2020年のドラフトで指名された同期。この年は1位がテルで、2位・伊藤将司、5位・村上頌樹、6位・中野拓夢、7位・高寺、8位・石井大智と、いわゆる「神ドラフト」といわれた当たり年でした。改めて、これだけの逸材が、よくぞ下位に残っていたと思います。
高寺のバッティングは初めてキャンプで見たときから、目を引きました。とりわけ「これはモノが違うな」と思わされたのは、打席での体勢を崩されたときの対応力。
バッティングの基本は、速い真っすぐに負けないスイングをすること。それができたうえで、緩急や変化球とのコンビネーションによってバッティングを崩された場合に、どう対応するか。私たちはそこをチェックします。高寺は崩されながらも、きっちりボールにコンタクトしていました。
高校を出たばかりで、こんな打ち方ができるんだと感心したものです。これは天性のものなので、教えられて身につけられるものではありません。これは将来的に首位打者を争う選手になるわ! と思ったのを覚えています。
もちろん、そのレベルに到達するにはバットを振る力を磨き、経験を重ねること。守備力の向上も不可欠です。入団当初はショートでしたが、内野なら適正はセカンド。外野をこなせるようになれば出場機会はもっと増える。それが監督時代の私の見立てでした。
そんな高寺も今年で6年目。長いファーム暮らしを経て、昨シーズンは一軍で67試合に出場。今シーズンは、故障で離脱した近本光司に代わってセンターを守る機会も一気に増えました。
5月12日の対ヤクルト戦では先頭打者ホームランを記録。7月21日の対横浜戦では延長11回にプロ入り初となるサヨナラヒットを放って、藤川球児監督にバースデー勝利をプレゼントしました。