■中学女子が文集に書いた“将来の夢”

 さあ、次いきますよ。この歌は中学校の卒業文集だろうと思います。作者の彼女は3年2組だったんですね。テーマは「将来の夢」。担任教師が書いたんでしょうね、色紙の真ん中に「将来の夢」って。それを囲むようにクラスメイトたちが、それぞれ思い思いに将来の夢を書いた。その中に、すごい集団がいたらしいんですよ。

 

文集の将来の夢二組だけ「くノ一」の女子が六人もいた
(石川明子)

 

 この馬鹿馬鹿しさがたまらなくいい。間違いなくおふざけですけど、3年2組には「くノ一になりたい」女子が6人もいたという。

 なんと無邪気な無鉄砲。しかし案外、こういうところに夢があるんじゃないかなぁ。卒業文集を見るたびに、遠いあの日、「くノ一」と書いた愛嬌のある6人がクスクスと笑う姿が作者には見えるんでしょう。

 実は私にもあるんですよ、卒業文集の思い出が。

 あれは私が小学校6年生のときの卒業文集。12歳だった武田少年は、こう書いていました。

「米ソの和解を求める」

 なんで、あんな馬鹿なこと書いたのかねぇ。ちょうどケネディとフルシチョフが激しく対立した、キューバ危機もあった時代。そういう背景もあって「米ソさえ仲良くすれば世界平和は一日でかなう」と思ったんでしょうね。

 マセてますよね。バカですよね。頭悪いくせに、難しいこと書きたがるんだよね。なんで、そんなこと書いたのかね。てっきり「消防士になりたい」とか、そんなこと書いてあるのかなと思ったら……。自分で見てビックリしたもん。

 もう一首、いきましょう。この句は笑っちゃいました。

 皆さん、まずは昭和のヒット曲、小柳ルミ子の『瀬戸の花嫁』の歌詞を思い出してください。

 

♪若いと誰もが心配するけれど
愛があるから大丈夫なの

 

 こう歌うわけでありますね。これを逆手に取って歌った一首。結婚式の披露宴で『瀬戸の花嫁』を歌う新婚夫婦に、年寄り夫婦がつぶやいた心の中の声。

 

愛があるから大丈夫と歌うから
若いと誰もが心配をする
(住友秀夫)

 

 きれいに歌詞を、ひっくり返してある。

 

  同じ語彙をほとんどそのまま使いながら意味だけを反転させるという、一種の離れ業を見せている。ユーモアとアイロニーの中に、愛の脆弱さを思い知った年長者の実感が込められている(同)


 穂村さんはこのように解説していますが、“愛がすべて”という若さへ心配する思いと同時に、どこかで、その幼さが羨ましくもある。その2つの思いが同居する歌。……私、この一首、大好きだなぁ。愛は取り扱い注意です。

※JASRAC申請中 260801883P

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武田鉄矢(たけだ・てつや)
1949年生まれ、福岡県出身。72年、フォークグループ『海援隊』でデビュー。翌年『母に捧げるバラード』が大ヒット。日本レコード大賞企画賞受賞。ドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)など出演作多数。