地震や豪雨など、大きな災害が起きるたびに見直される家庭の「防災備蓄」。水や非常食を確認してみたら、「賞味期限10年」の文字に驚いた――。そんな経験がある人もいるのではないだろうか。一般的なクッキーなら、賞味期限は数か月から長くても1年程度という商品が多い。それが非常食になると、「5年保存」「7年保存」、なかには「10年保存」をうたう商品まである。
水も同じだ。スーパーやコンビニで売られているミネラルウォーターとは別に、防災用品売り場には「10年保存水」が当たり前のように並んでいる。
とはいえ、冷静に考えると不思議である。2026年に買ったクッキーを、2036年に開封して食べる。いくら「保存食」と書かれていても、カビは生えないのか。腐らないのか。そもそも、普通のクッキーと何が違うのだろう。
そこで話を聞いたのが、防災備蓄品ブランド「The Next Dekade」を展開する「グリーンデザイン&コンサルティング(GDAC)社」だ。同社は、長期保存食品の製造ノウハウを持つグリーンケミー社と協業し、約16年前から保存水やクッキーなどを手がけてきた。
では、“10年保存”はいったいどのように実現しているのか。まず、10年保存クッキーについて返ってきた答えがこちら。
「10年保存クッキーは、気密性・遮光性の高いレトルトパウチにクッキーを密封したうえで、レトルト機による加圧加熱殺菌を行っています」(GDAC社広報=以下同)
レトルト加工とは、密封した食品を高温・高圧で加熱し、食品中の微生物を殺菌する方法。さらに外から空気や水分、光などの影響を受けにくい容器を使うことで、その状態を長期間保つという。防腐剤や脱酸素剤に頼って長持ちさせているわけではない。ただし、ここには大きな誤解があるという。
「レトルト加工自体は広く一般的に使われている加工技術であり、レトルト加工をすれば、それだけで10年間保存できるというものではありません」
重要なのは、食品に合わせて原材料や配合、加熱温度・時間・圧力、容器などを最適化すること。約16年にわたって蓄積したノウハウをもとに、味や食感をできるだけ損なわず、長期保存できる条件を設定しているという。
つまり、「ものすごく強力な保存料が入っている」わけでも、「レトルト加工という魔法をかけている」わけでもない。原材料から殺菌方法、容器まで、10年間もたせるための条件を積み重ねた結果なのだ。