​「10年後も安全」は計算ではなかった

 それでも疑問は残る。2026年に作ったクッキーが2036年にも安全だと、どうやって確かめるのか。

「実際に長期間保存した製品を使った経年検査を継続して行い、品質を確認しています」

 つまり「10年」は計算上の数字ではない。実際に長期間保存した製品を第三者機関で検査し、一般細菌や大腸菌群などについて衛生上問題がないことを確認しているのだ。

「長期間保存することで、味や香り、色、食感などには一定の経年変化が生じます。製造直後と10年後で、まったく同じ状態というわけではありません」

 つまり、10年間まったく変化しないわけではない。味や食感などには経年変化が生じる一方、衛生面については検査を重ね、賞味期限内であれば問題なく食べられることを確認している。では、「10年保存水」はどうなのか。こちらはクッキーとは仕組みがまったく違う。

 原水となる水道水を「RO膜」と呼ばれる膜で3回ろ過し、さらにオゾンで殺菌。長期保存中の品質変化につながり得る有機物やミネラル、不純物、微生物などを徹底的に取り除き、硬度0の高純度な水にしたうえで、気密性の高いペットボトルへ充填している。

 さらに興味深いのが、同社が扱う「7年保存水」と「10年保存水」の違いだ。実は、中に入っている水は同じなのだという。水の処理方法を変えているのではなく、長期保存後の検査・検証などをもとに、それぞれ7年、10年という品質保証期間を設定しているのだ。

 ただ、せっかくの長期保存食も「買ったから安心」ではない。

 同社は、家庭ならまず家族全員の1日分から用意し、できれば3日分まで増やすことを推奨している。10年保存品は交換回数を減らせる一方、買ったこと自体を忘れやすい。そこで、賞味期限をスマホのカレンダーに登録したり、防災の日など年に一度は備蓄を確認したりする方法を勧めている。

 賞味期限が近づいたら捨てるのではなく、一度家族で食べてみる。「どんな味なのか」「子どもや高齢者も食べられるか」「一食にどれくらい必要なのか」を知る機会にもなるという。食べた分は、新しい備蓄品へ入れ替えればいい。

 10年もつから、10年間忘れていいわけではない。非常食を長持ちさせる技術がここまで進化したからこそ、最後に必要なのは、それをしまった人間が忘れないことなのかもしれない。

取材協力: グリーンデザイン&コンサルティング社
防災備蓄品や長期保存食品を手がける企業。長期保存の研究・ノウハウを持つグリーンケミー社と協業し、約16年前から保存水やクッキーなどの長期保存食品を展開している。災害時に必要な「食」と「水」を、長期間安心して備蓄できる製品づくりに取り組む。