■咲子は爆弾を抱えているのだろうか?

 咲子について各人が語っていく、舞台のような会話劇だったが、X上では、《回を重ねるごとに面白い。人は多面体で、人は見たいように人を見る。誰にも見せてない顔だってある》《急に有り得ない設定をぶち込んできて、興醒めしてる。それよりは、散々前半に伏線ばら撒いてきたものを、少しずつでも回収して欲しかった》などと、賛否の声があがった。

 流れ的に咲子(蒼井)の秘密を描くのかと思えば、ほとんどが喫茶店での会話劇だった。ストーリー自体は、直人(高橋)、樹生(中島)、千鶴(臼田)、宮内(リリー)の証言によって、咲子の意外な面が語られ、咲子自身は海辺の町にたどり着いていて、旧知の男性らしき篤彦(井ノ原快彦/50)のところにいた、ぐらいでほとんど進んでいない。

 しかも会話劇の内容は「自分が知っているのは相手のごく一部」という、始まってからずっと繰り返されてきたモチーフ。視聴者は失踪した咲子のことが気になっていて、突然の会話劇に「なんでここでこれ?」と当惑する気持ちもわかるし、もちろん、賛否が分かれるのもわかる。

 しかし、この会話劇にはちゃんと意味がありそうだ。あらためて「自分が知っているのは相手のごく一部」を強調したのは、次のエピソードに向けてのクッションになっているのかもしれない。つまり咲子の秘密は、彼女の一部だけを見ている人には、受け入れにくいものということなのかも。

 今回、充がかなりディスられていたが、実は咲子もまあまあエグいことをしていて、「充も咲子もどっちもどっちだね」と思えるように、会話劇を挿入した可能性がある。そうなると、篤彦(井ノ原)は元カレで、咲子はこれまで何度も会っていた、という流れかもしれない。脚本の生方氏は「共感や感動を目指した物語ではない」と明言しており、咲子が共感されない行動をとっていても、不思議ではない。

 賛否が分かれたにもかかわらず、第8話の平均世帯視聴率が8.1%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と番組最高を更新。配信サービス・TVerのお気に入り登録数も144.3万(9月1日午後1時現在)に伸ばしていて、生方作品としては『silent』の255.4万、『海のはじまり』の199.5万は無理でも、『いちばんすきな花』の148.7万に迫れそうだ。

(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。