■「視聴者の感覚がまともになってきているんだと思います」元テレ朝プロデューサーが分析
前出の鎮目氏は続ける。
「“レンジローバー事件”に限らず、タレントの私物を使うネタというのは、ドッキリの延長のような感じで、本当によくある手法でした。ただ、実際のところで言うと、裏で話がついていて、知らなかった体でやってもいたんですよね。やられる側も知っていて、あくまでも“演出”で私物破壊などをやっていたと。
ただ、それがウケたのは昭和というか20世紀というか……。最近は、そうした演出をしても、“タレントが被害を受けること”自体を不快に思う視聴者が増えているので、もう時代と離れている手法と言えて、“誰得なんだろう”という感想も抱いてしまいますよね」
さらに鎮目氏は「1つ、かつてと大きく変わったこと」として、「芸能人同士の内輪ノリが、全くウケなくなってしまっている」と指摘。そして、
「ツッコミ芸なんかもそうですが、“誰かが酷い目に遭うこと”がリアルなイジメと感じて、不快に感じる視聴者が増えているんです。もっとも、かつての“人の物を勝手に壊すのが面白い”みたいな、昔のノリのほうがよほどおかしかったわけですから、視聴者の感覚がまともになってきているんだと思います。
今回の件は、それに追いつけていないテレビ業界の古さが、露呈してしまった感じですよね。木梨さんと同世代のタレントは、そういう“勘違い”をしがちなところがありますが、時代に合わせて変わっていかないと、世間から総スカンというか、反発を食らうのは避けられないと思います」
さらに鎮目氏は、制作サイドの視点から、今回の“ベンツの修理費をABEMAが支払った”という点について、
「ABEMAが時代をちゃんと分かっているなら、木梨さんにそこまで暴れて欲しいとは思ってなかったはずですよね。お金もかかるし、炎上リスクもあるし。プロデューサーからすれば、やめてほしいでしょう。
ですが、タレント側からすれば、“面白くなるだろう”“盛り上がるし話題になるだろう”と、番組のためにやっているのだから、それは番組側が弁償するのが当然だよね、と勘違いしている可能性はありますよね」
と内情を推察し、こう続ける。
「そういう、結局、局側がお金を払うことは、結構よくある話でして……。たとえば昔、海外ロケに行く際に、タレントが家族まで連れてきて、家族の宿泊費を局側に払わせちゃう人もいましたし……。本来なら自分たちで払うべき私費まで、局側に払わせることが当然と思っているフシがあるタレントもいて、実のところテレビ制作者側も迷惑しています。
さすがに、現代はそういう人たちはいなくなりつつありますが。言ってしまえば“かつての人気者”世代の人たちは、そういうことをいまだに局側に要求してくる風潮がまだ残っているところもあって。それは本当に良くないことで、“迷惑だ”という声もよく聞きますね」
時代はもう、令和8年――。
鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)