■“隠れ名物”のイチゴとうどん
まずは、弱点とされた、“グルメ”から反撃ののろしを上げよう。
最終ページの表の通り、埼玉には草加せんべいや深谷ねぎといった名物が数多くある。そして今、猛烈に存在感を増すのが、イチゴだ。
「イチゴといえば栃木県ですが、埼玉県も作付面積では全国上位。県オリジナル品種の『あまりん』は、日本野菜ソムリエ協会主催の『全国いちご選手権』で、3年連続最高金賞を受賞しました。東京の一流ホテルのスイーツにも使われ、栃木のイチゴに迫るほどの実績を積んでいます」(前出の谷村昌平氏)
さらに、県民の胃袋を古くから支えてきたのが、うどんだ。今年6月に『誇るべき埼玉うどん 26の物語』(双葉社刊)を上梓した武正倫氏は、次のように話す。
「香川のように県の名物として君臨しているわけではありませんが、埼玉の各地には、日常食としてのうどんが深く根づいています。専門店はもちろん、定食屋やそば屋でも提供されていて、“本物の隠れた名店”がたくさんあります」
埼玉県の小麦収穫量は全国10位。中でも、熊谷市は、作付面積が関東1位を誇る。その小麦を使った“ご当地うどん”が、県内各地にひしめく。
「私の出身地である加須市には、コシが強くて喉越しのよい“加須うどん”があります。江戸時代、利根川の渡舟場や不動岡の總願寺を訪れる参拝客をもてなすためにふるまわれたのが発祥とされています」(同)
さらに鴻巣市には、荒川河川敷の川幅日本一(2537メートル)にちなんだ“川幅うどん”があるという。
「明治24年創業の『手打うどん 長木屋』で提供されているものは、なんと麺の幅が約8センチ。モチモチとした弾力が歯を押し返し、噛みしめるほどにうま味が広がります」(同)
県西部では、冷水で締めた太麺を、豚肉などが入った熱々の濃いつけ汁で食べる“武蔵野うどん”も人気。
「狭山市にある『田舎うどん・なんかん』は、肉汁うどんが看板メニュー。ムッチリとした食感の太麺と、豚肉やほうれん草、油揚げが入った、甘いつけ汁の組み合わせは、まさに田舎のごちそうですよ」(同)
うまいうどんを食べたい首都圏民は埼玉へ向かうべし。
【後編】星野源、草なぎ剛、田中みな実、サッカー日本代表のゴールキーパー・鈴木彩艶も埼玉生まれ。コンビニの『ファミリーマート』や100均の『Can★Do』など、発祥企業も多い埼玉の魅力を、さらに深掘りする。《【後編】はこちらから》
谷村昌平(たにむら・しょうへい)
埼玉県境の東京北多摩出身。大学卒業後、新聞社や出版社勤務を経てノンフィクションライター・編集者、出版プロデューサーに。主に日本の民俗学調査をライフワークとし、全国を歩く。埼玉ブームの火付け役となった『埼玉の逆襲』や、『千葉の逆襲』(ともに言視舎)など著書多数。
武正倫(たけまさ・りん)
埼玉県加須市出身のユーチューバー。日本大卒業後、市立中の社会科教員や、東京の「日本橋三越本店」販売員などを経て、2021年7月に自身のチャンネル「埼玉うどん子TV」を開設。幼い頃から通った地元のうどん店が、高齢化などによって閉店が増えたことに危機感を覚え、「うどん文化を盛り上げたい」との思いから一念発起。県内のうどん店を一軒一軒撮影し、埼玉のうどん文化の魅力を紹介している。2026年6月には足しげく通う26店を収録した『誇るべき埼玉うどん 26の物語』(双葉社刊)を上梓。