■“変わらなさ”と“新しい楽しみ方”が両方ある
一方で、支持を広げているのは若者だけではない。大人とお菓子の付き合い方そのものも変わってきたと、前出の松林氏は言う。
「以前は仕事中に『お菓子なんて食べて』という空気の職場もありました。昔なら煙草を一服して気分転換する人も多かったですが、今は禁煙が進み、ガムやグミなど、お菓子を口にして息抜きする人が増えています。そうした変化も、お菓子が大人の生活やオフィスに入り込んだ背景にあると思います」(以下コメントはすべて松林氏)
その代表格が、森永製菓の『ラムネ』だ。
「昔は子どもがボトルをカチャカチャ鳴らして食べるイメージでしたが、ブドウ糖が多く含まれていることが知られ、仕事や勉強で頭を使う場面のお菓子として大人にも注目されました。今は大粒をチャック付きパウチに入れた商品もある。昔ながらの商品を残しながら、食べる場所や時代に合わせているんです」
さらに「ボンタンアメ」も、思わぬ用途で再注目されている。
「SNSを中心に『映画やライブの前に食べるとトイレに行きたくなりにくい』という口コミが広がりました。もちろん医学的な効果が確認されている話ではありませんが、メーカーが想定していなかった理由で昔の商品がもう一度注目される、とても今らしい現象です」
一方、“意味”を大胆に変えてきたのが『ココアシガレット』だ。
「昭和の頃は、タバコを吸う大人のまねをする“大人への憧れ”のお菓子でした。それが平成に禁煙が広がるとパッケージには禁煙を応援するメッセージまで入るようになった。もともとタバコへの憧れを疑似体験する商品が、今度は禁煙を応援する側になったんです」
さらに令和では、歌手のあいみょんがタバコのようにくわえる姿などから若者にも注目され、「かわいい」「写真に撮りたい」と新たな楽しみ方も生まれているという。
「長く残る商品というのは、何でも新しくしてしまうのではなく、変わらない核の部分を持ちながら、その時代の人が新しい意味を見つけられる余地があるんでしょうね。駄菓子は、その“変わらなさ”と“新しい楽しみ方”が両方あるから、昭和から令和まで世代を超えて愛され続けているんだと思います」
次に“大化け”するのは、あなたが子どもの頃に夢中になった、あの一品かもしれない。
松林千宏(まつばやし ちひろ)
高校時代のコンビニアルバイトを機にお菓子の進化に魅了され、以来毎日10種類以上、通算10万個を超えるお菓子を実食してきた日本屈指の「お菓子勉強家」。テレビ東京『TVチャンピオン』で3度の優勝(コンビニ通、スナック&駄菓子通、お菓子通選手権)をはじめ、『マツコの知らない世界』(TBS系)『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)などメディア出演多数。著書に『日本懐かしお菓子大全』(辰巳出版)がある。