日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今回、戸田氏が注目したのは、近年の日本で増加する、業績好調な企業による「黒字リストラ」についてです。

 日本企業の雇用環境に大きな変化が起きています。業績が悪化した企業が経営再建のために行うイメージが強かった「リストラ」ですが、近年では「最高益」の三菱電機をはじめ、第一生命保険、ソニーグループ、三菱ケミカルグループ、明治ホールディングス、マツダ、資生堂といった日本を代表する“黒字企業”が相次いでリストラを敢行。パナソニックホールディングスに至っては、グループ全体で1万人規模の人員削減を行う方針を示しています。

 東京商工リサーチの調査によると、2025年に早期・希望退職募集が判明した上場企業は43社で募集人数は1万7875人。そのうち黒字企業による募集は29社と全体の67.4%を占め、前年からの増加率は約2.5倍となっています。

 企業が業績好調なうちに割増退職金や再就職支援を講じ、社員の自主的な退職を促す「黒字リストラ」。その背景にあるのは、バブル期世代をはじめとする管理職層の適正化や、DX・AI推進に向けた人的リソースの再配分です。

 将来の競争力を維持・向上させる「攻めの組織刷新」という側面を持つ一方、こうした動きは社員一人ひとりのキャリアに大きな影を落とすことにもなります。割増退職金や手厚い再就職支援が用意されるなど、一見すると好条件に見えますが、大企業で培った経験や役職が転職市場で同じように評価されるとは限らず、再就職後に年収が大きく下がったり、これまでとは異なる立場や環境への適応を求められたりするケースも。会社に残ったとしても、配置転換や子会社への出向、組織再編による役割の変化、後輩が上司になるなど、これまでとは異なる働き方を求められる可能性があります。