日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今回、戸田氏が注目したのは、現在、急増中だという「死後離婚」についてです。

 配偶者を亡くしたあと、義父母や義理の兄弟姉妹との関係をどうするか──。

 今、「死後離婚」というワードが注目されています。正式には「姻族関係終了届」のことを指し、配偶者の死亡後、本籍地または住所地の市区町村役場に提出することで、配偶者側の親族との姻族関係を終了させることができます。

 法務省の戸籍統計である「戸籍統計年計表 種類別 届出事件数」を確認すると、死後離婚の件数は2016年度から2020年度にかけては年間4000件を超える届け出を記録。その後は落ち着いたものの、近年は再び増加傾向にあります。

 その背景には、人口の多い「団塊ジュニア世代」が50代に入り、配偶者との死別を経験する人が増えていることに加え、医療技術の進歩で平均寿命が延び、配偶者が先に亡くなった時点でも高齢の義父母が存命であるケースが目立ってきたことなどが挙げられます。

 結婚という制度を家と家との結びつきとして重んじる古い世代の意識が残る一方で、現代の現役世代においては、夫婦関係を個人と個人の結びつきとして捉える価値観が広く浸透しており、「夫が亡くなった後に、なぜ自分が義理の親の面倒を見続けなければならないのか」という疑問や葛藤を抱く人が増えるのは自然な流れでしょう。

 死後離婚を選ぶ人々が直面しているのは、将来的な義父母の介護や経済的な扶養に対する強い不安、あるいは生前からの同居生活に伴う精神的な負担です。

 民法の規定によれば、原則として配偶者の血族である姻族に対して直接的な扶養義務が生じることはありません。しかし、「嫁が義理の親の世話をするのは当然だ」という無言の圧力や期待が、残された妻たちの大きな足枷となっている場面も少なくないようです。

 仏壇の買い替えやお墓の管理について電話で催促されたり、自身の体調が優れないにもかかわらず義父母の通院のために車の運転を強要されたりといった、過度な依存関係に疲れ果ててしまう事例も後を絶ちません。実際、ネット上でも、「夫が亡くなったあとまで義理の親の介護をするのは無理」「夫がいなくなったら、義実家とは距離を置きたい」といった声が聞かれます。