■北香那がうますぎるゆえの異物感

 北香那と岡山天音の演技に圧倒される神回だった。そこに小池栄子(黒木)、岡部たかし(54/精神科医・五十畑)、味方良介(33/鴨居のバディの刑事)という芸達者がいるのだから、文句のつけようがない。さらにいえば脚本、演出、劇伴もすべて質が高い。今期のドラマで見ないのがモッタイナイ1本なのだ。

 しかし、視聴率、配信ともに数字は良くない。午後9時台の連続ドラマにしては、内容が重いのも理由のひとつかもしれないが、もうひとつ思い当たるのが、北香那の演技。とにかくうますぎるのだ。

 たとえば黒木と絡むとき、毎回のように余計なことを言って、そのすぐあとに「言わなきゃよかったかな。でも別に本当のことだし、でも次は少し気をつけようかな」という感情の動きを、一瞬の表情で伝えてしまう情報量の多さ。番組公式のインスタグラムでも、やたら北の切り抜き動画があがっているが、制作側も彼女の演技を楽しんでいるのだろう。

 だが、その北が演じる白石が、かなりのクセ強キャラ。演技がうまいだけに、その“異物感”がハンパなく、初見で引いてしまった人もいるはずだ。X上で、《北香那さん演じる白石先生、最初はポンコツすぎて、ムカついていたけれど、だんだん好きになってきた》などの声があるように、白石はハマると、とてつもなく魅力的なキャラなのだが……。

 また、物語の横軸となる、1話完結のエピソードがメインに描かれ、全体を通した縦軸となる、係長・山崎創(渡部篤郎/58)の失踪という大ネタがあまり描かれなかったのもあるだろう。黒木と白石の絡みが多くなり、結果的に白石が悪目立ちしてしまったが、メインストーリーを追っていく展開だったなら印象も変わったかもしれない。

 数字はさておき、北香那が本作で強烈なインパクトを与えたのは間違いない。NHK朝ドラ『ばけばけ』で、才色兼備な島根県知事の娘・江藤リヨを演じて話題になり、同局夜ドラ『替え玉ブラヴォー!』で破壊的ヒロイン・佳里奈役で主演と、すでに売れっ子だが、今後はさらなる活躍が期待できそうだ。

(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。