■速さだけじゃない!真っすぐで大切な質

 本人も、この点は意識したんでしょう。オフに投球フォームを固めたことで、今シーズンはコントロールが改善。昨年、一軍を経験したことでメンタル面でも成長し、飛躍の年としています。

 工藤は7月11日のヤクルト戦では、球団最速タイとなる163キロを叩き出しました。しかし、ピッチャーにとって大事なのはスピードガンの球速表示ではなく、スピン量やホップ成分などボールの質です。

 私も、これまで数多の投手のボールを受けてきましたが、別格だったのは現監督の藤川球児さん。全盛時の球児さんはとにかく速かった。スピードガンの最速は156キロだそうですが、打者の体感的にはゆうに160キロを超えていたでしょう。なんと言っても真っすぐを待っているプロの強打者がバットに当てることさえできなかったのですから。

 現在の工藤はまだ、その域にはありません。空振りを奪っているのは真っすぐより、カットボールやフォークなどの変化球が多い。でも、まだ24歳。どこまで真っすぐの質が向上するか、夢を感じさせます。

 新守護神として修羅場を経験していることも、工藤の成長を促すはずです。

 木下も後半戦から勝ちパターンの一端を担うようになりました。最速は161キロですから、工藤と遜色がありません。しかし真っすぐの質という点では、工藤と同様、まだ成長の余地があるピッチャーです。

 変化球ではなく、真っすぐだけでもバンバン三振を奪えるようになれば、将来的には工藤とのダブルストッパーも考えられます。

 前半は岩崎優(いわざき・すぐる)、ドリスが中心だったブルペン陣ですが、工藤、木下が加わり、厚みを増しました。育成出身の新人でサイドハンド、神宮僚介(じんぐう・りょうすけ)も好調です。9月後半の過密日程を乗り切るには、彼らの活躍が欠かせません。

矢野燿大(やの・あきひろ)
1968年12月6日生まれ。90年ドラフト2位で中日ドラゴンズへ入団。97年オフにトレードで阪神タイガースへ移籍すると、正捕手としてチームの躍進を支え2度のリーグ優勝に貢献。