■物語テーマである看護がおざなりに

 24年前期の『虎に翼』、25年後期の『ばけばけ』など、多くの朝ドラで取り上げられてきた、女性の貧困と自立の問題が描かれた。前半は廃娼運動で描き、今度は派出看護で働く元女郎のセツ(村上穂乃佳/31)を通して描かれることになったのだが、どちらも描写が甘く、わかりにくい。

 廃娼の問題は、朝ドラ的に娼婦が置かれた状況を描きにくいというのがあったかもしれないが、当時の悲惨な状況がわかりにくく、思い入れできなかった。今回の派出看護でも、看護の描写はこれまでどおりに換気と脈とりと清拭ばかり。以前から指摘されていたように看護の現場の描写が少ないため、本当の看護とはと言われてもピンとこない。

 要は訓練された看護師のシーンと、それに比較する無資格の看護師のシーンを描かないから、りん(見上)と直美(上坂)が寛太(藤原)に抗議することに、ツッコミの声があがってしまうのだ。なにしろ本当の看護と言いながら、直美が平蔵(太田光/61)の囲碁の相手をしただけの回もあったのだから。

 また、りんと“シマケン”こと島田健次郎(Aぇ!group佐野晶哉/24)とのモヤモヤした関係など、本作は中途半端な恋愛シーンがやたらに多く、以前から《いらない》との声があがっていたが、そのことが今になって響いているように思える。恋愛要素を減らして、物語のテーマでもある看護のシーンをもっと増やしていたら、印象も変わったと思うのだが……。

 8月31日放送の第111回から、脚本に22年後期の朝ドラ『舞いあがれ!』を手掛けた佃良太氏が加わり、吉澤智子氏との2人体制になった。テコ入れの意味もあったのかもしれないが、時すでに遅しだろう。なんとか『おむすび』の朝ドラワースト超えは避けたいところだが、シマケンの再登場の影響が懸念される。

(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。