■エグい秀吉じゃないと物足りない
家康のこれまでを一気に振り返る回だった。松下は家康の苦悩、屈辱、秘めたる思いをすべて表現する、振り幅の広い演技を見事に見せ、X上では、《大河史上最も不気味な徳川家康の生まれた背景を説明する回として、今回は説得力があった。松下洸平の演技がとても光っていて唸ってしまった》などと、称賛の声が多い。
一方で、《期待していたのは、羽柴秀長が秀吉とは別方面で軍事作戦を完遂できる優れた武将であり、取次としても活躍したという、事績に基づく一面が描かれることだったんよね。兄の添え物ではないというところを描いて欲しかったのに、今のところ、添え物以下の働きが目立つの泣ける》など、豊臣兄弟の描写には厳しい声が。
たしかに家康(松下)が話題になる一方で、相変わらず小一郎(秀長、仲野)に主人公感がない。秀吉(池松)が陰湿で残虐な人物になっていく描写が欠けているため、調整役としての小一郎の役回りが描けていないのだ。第35回の序盤で秀吉が駄々をこねて走り回っていたが、そういうおちゃらけ描写はもう必要ない。物語も半ばを過ぎた今、闇落ちした陰湿な秀吉を描くべきだろう。
家康は、秀吉陣営と信雄・家康連合陣営が激突した「小牧・長久手の戦い」以降、秀吉に服従するようになるので、評判の良い家康の活躍は次週がピークとなるだろう。いよいよ秀吉の天下取りが本格化するが、強い印象を残した信長や光秀(要潤/45)、家康らに比べると、このままでは2人ともボンヤリした存在のまま。ぜひ、エグい秀吉に期待したい。
(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。