日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今回、戸田氏が注目したのは、東南アジアで成功する“日本式セールス”についてです。

 東南アジアのベトナムで、日本生まれの乳酸菌飲料『ヤクルト』が好調な売れ行きを見せています。ヤクルト本社が2026年5月に公表した速報データによると、ベトナム事業における2026年1〜3月の1日当たり平均販売本数は135.8万本に達し、前年同期比で10%の増加を記録しました。同社が海外事業を展開する国と地域の中で、現在ベトナムが最も高い伸び率を示しています。

 1億人を超える人口を抱え、安定した経済発展を遂げるベトナム。この巨大市場でヤクルトが右肩上がりの成長を続ける背景には、「日本式」の販売網と独自の商品展開があります。

 売上の4割を支えているのが、日本でお馴染みの「ヤクルトレディ」による訪問販売ネットワーク。オフィスビルなどのセキュリティが厳しいベトナムでは、一般住宅を中心に一軒一軒訪問して固定客をつくる地道な手法がとられています。ベトナムでは近所の人々が道端に集まって会話に花を咲かせるライフスタイルが根付いており、突然の訪問に拒絶感が少ない点が、この対面販売方式と合致したようです。ヤクルトレディたちは世間話を交えながら顧客との人間関係を構築。2018年からは「ヤクルトライセンス」という社内資格制度による収入アップの仕組みも、スタッフのモチベーションを後押ししています。

 残る6割を占める店頭販売でも、ローカライズ戦略を徹底。近年、現地で関心が高まる肥満対策などの健康志向を背景に、2024年には糖質を抑えた「ヤクルトライト」を発売すると、これが事前の需要予測を3倍以上も上回る大ヒットとなりました。