■出来が良すぎて次が心配

 本作ほど、見終わった後味がいいドラマはそうそうない。咲子(蒼井)、充(松山)、樹生(中島)、直人(高橋文哉/25)ら、登場人物それぞれが納得したうえで、言葉にはしにくいけれど心地よい関係に収まった。さらにはイマジナリーで登場したあずさ(夏帆)も、樹生だけでなく咲子との会話を描き、こんな未来もあったかもと、いい形で終わらせてくれた。

 これまで生方美久氏が脚本を手掛けた、言葉にしにくい関係を描く一連の作品は、最後がどうもふわっとした形で終わりがちだった。たとえば『silent』は、想(目黒蓮/29)と紬(川口春奈/31)がいろいろあったあと、また付き合い直す感じを匂わせて終わり。『海のはじまり』(ともにフジテレビ系)は、みんなの協力で海(泉谷星奈/9)を育てていくという、とりあえず再スタートの地点に立つまでで終わっている。描ききっていない感じで、その先がどうも気になってしまうのだ。

 しかし本作では、咲子たちがどうやって生きていくかが明確に描かれていた。最終回のタイトルが「名前のない関係になるまで」であるように、それぞれが「名前のない関係」に着地するまでを描いていくという、テーマがよりはっきり見えていたからだろう。明らかに以前の作品に比べ、進化している。生方ドラマで一番の出来だといえる。

 X上では、《『いちばんすきな花』(※フジテレビ系)と少し似てる主題だったけど、ドラマの前半に「事故」「不倫」といった続きが気になる要素をしっかり入れ込んで、後半まで視聴意欲を維持させる展開の作り方は『いち花』と比較して進化しているなと思った。これがTBSのドラマの作り方なんだな〜とも思った》など、生方氏が初めて組んだTBSとの相性の良さを指摘する声も。(※=編集部注)

 ここだけのものを見させられたら、早くも次回作が気になるところだ。しかし、生方氏はヤングシナリオ大賞出身でフジテレビとの縁が深いため、次作はTBSではなくフジテレビとなるかもしれない。制作側としては、本作で一気にハードルがあがり、プレッシャーも感じるだろうが、さらなる素晴らしい作品に期待したい。

(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。