■「彼女は、可憐で気丈な役者でしたね。そういう役者って、なかなかいないんですよ」
「いや……びっくりしましたよ。でも、彼女は病気のこと、闘病していることを言わなかったんですよね。それは彼女らしいなと……。感服しましたね」
中村さんの突然の訃報に驚きを隠せない感じの井筒監督は、寂しそうな様子を漂わせながらも言葉を紡いでくれた。
「(闘病は)苦しかったんでしょうが、それをいっさい表に出さないで……自分の病気は自分で治す、というところだったんでしょうね。彼女は健気で自然体の人で、でも、元から腹の据わった役者でしたね」
中村さんがヒロインの李慶子(リ・キョンジャ)を演じた映画『パッチギ!LOVE&PEACE』は2007年5月に公開された作品。井筒監督は話す。
「もう20年前ですか……。彼女は二代目のキョンジャを演じたわけですが(※初代は沢尻エリカ。2005年公開の『パッチギ!』のヒロイン)、オーディションに来た時、“絶対にこの役をやらせてください”と言ってましたね。顔にもそう書いてあった。彼女からは強い意気込みを感じましたね。
実は、二代目のキョンジャ役はなかなか決まらなかったんですよ。気丈なヒロインを描きたいと思っていたんですがね。そこに現れたのが彼女だった。彼女は、可憐で。そして気丈な役者でした。そういう役者ってなかなかいないんですよ。僕はそういう役者しか選ばないんだけどね。映画では本当に頑張ってくれましたね……」
最後に井筒監督はあらためてこう語った。
「闘病していることを言わない……それは本当に彼女らしくて、本当、彼女は芸能の世界に生きる、芸能者でしたよ」
いづつ・かずゆき
映画監督。1952年12月13日生まれ。奈良県出身。『ガキ帝国』(1981年)、『岸和田少年愚連隊』(96年)、『パッチギ!』(2004年)、『パッチギ!LOVE&PEACE』(2007年)ほか数々の注目作を送り出す。現在、新作映画『国境』(2027年公開予定)を製作中。