子どもに泣かれた戦隊ヒーローが、なぜ家族を最優先にするようになったのか。

 俳優・タレントの照英が、2026年9月16日に渾身の書きおろしエッセイ『Family First 子どもに泣かれた戦隊ヒーローがたどり着いた「家族」と「育児」のかたち』(双葉社)を刊行した。

 スーパー戦隊シリーズ『星獣戦隊ギンガマン』でデビューし、国民的時代劇『水戸黄門』にレギュラー出演していた照英が、2007年に同作を突然降板。その理由は「子育てをしたいから」だった。子どもが苦手だったという著者が、どのようにして3児の父として歩んできたのか──。夫婦関係、きょうだいの絆、動物との触れ合い、そして「父親としての在り方」を余すところなく語った全224ページの一冊だ。

 本書の第6章では、心理学者・杉山崇教授(神奈川大学人間科学部)との対談が収録されている。子育ての不安、夫婦喧嘩の乗り越え方、子離れの難しさ……すべての親の心に響く言葉が詰まったその対談を抜粋、再編集してお届けする。【前後編の前編】

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照英(左)と心理学者の杉山崇氏 ※撮影/河村正和

■好きこそものの上手なれ

照英 はじめまして。このたびは、どうもありがとうございます。

杉山 はじめまして、杉山です。いや、先ほど編集さんとの打ち合わせ風景も拝見いたしましたが、テレビで拝見したままというか、テレビ以上に素敵な方ですね。

照英 いえいえ。ずっとこんな感じなんですよ。基本的に不器用なので、何にも変わらないまま50歳を過ぎちゃいました。さっそくですが、本書の原稿も読んでいただいたそうで。

杉山 拝読しました。とても興味深かったです。今回はその内容に沿いながら、子育てに関して心理学的なアプローチのお話ができたらと思っています。

照英 ありがとうございます。子育てって、本当にいろいろな考え方があって難しい。子どもたちがここまで健康に育ってくれたことは良かったと思っているんですが、はたしてこれが100点満点の正解だったのかというと、自信はないんですよね。そんな心境で、このような本を出して良かったのかという不安もあります。

杉山 子育てには正解はないですからね。

照英 そうなんです。だからこそ、悩み続けている部分はあります。我々の世代が受けてきた、いわゆる“昭和の子育て”と今の子育てって、違うじゃないですか。

杉山 特に父親の在り方とか、大きく変わっていますよね。だからこそ、『水戸黄門』を降板して俳優業から一線を引かれたというお話が印象的でした。

照英 あの時は、「俺、何やってんだろう」って……何のために結婚して家族を持ったのか、わからなくなっちゃったんですよね。そうしたら、子どもが生まれた時に、妻と一緒にいたい、子どもと一緒にいたいって思うようになってきちゃって。それができないなら、俳優にこだわらなくてもって考えるようになったんです。私の場合、たまたまNHKの『すくすく子育て』の司会の仕事をいただいたりして、同じ芸能界で仕事のシフトチェンジができたから幸運でしたけど、現実的には、そうできない人がほとんどだと思うんです。そんな中で、どうやって子育てや家族と向き合えばいいんでしょうか?

杉山 マインドの持って行き方が大事なんですよね。実際に仕事を辞めるっていうのは難しいことなんですけど、仕事していても、心の中に家族がいなくなるわけじゃない。

照英 “心の中”ですか。

杉山 そう。心の中ではずっと家族と一緒にいられると思うんです。心って、けっこう自由で、何かを思い浮かべたら、心の中では現実とそんなに変わらない気持ちになれるものなんですよ。心の中で「今頃、奥さんやお子さんは、こんなことしてるかな?」とか想像するだけでも、ちょっと嬉しい気持ちになるものです。だから仕事を辞められなくても、心の中はいつでも想像できるように気持ちを傾けていただけたらなって思います。

杉山崇氏「心の中ではいつでも家族と一緒にいられる」※撮影/河村正和

照英 家族を想いながら働くってことですね。新しい発見です。本の中にも書きましたが私がこうして子育てに傾倒するようになったのが、自分の考えにこだわりがある頑固な父を見て育ってきたから、「自分は絶対にそうならない!」という気持ちが強かったんです。だからとにかく、そこを打破したかったんです。父親の仕事が忙しくてあまり構ってもらえなかった自分の人生があるから、子どもにはそういう思いをしてほしくないっていう感覚なんですよ。

杉山 そうですね。でも、令和の現在ではだんだん変わってきているんです。子どもたち一人一人を見ていこうという風潮にだいぶなってきました。

照英 そうなると、父親の責任というのもだんだん大きくなってきますよね。それはすごく感じています。でもその反面、家庭に向き合いすぎちゃっているのかなと思うこともたまにあって。そういう部分も含めて、これで良かったのかなとか、本当にこの本を出して良かったのかなと不安に思ったりもするんです。

杉山 そういう子育てをしてきて、照英さん自身はどう思われていますか? 周りの評価とかではなく。

照英 不安はあっても、自分の中ではそれがいいと思っているし、そんな自分が嫌じゃないっていうのが今の正直なところですね。

杉山 自分が嫌じゃないっていうのが一番だと思うんですよね。“好きこそものの上手なれ”ってよく言いますけど、自分が好きなことをしているなら、それも正解だと思うんです。おそらく、照英さんは“父親であること”が好きだった。だから、みんなを全力で幸せにできる父親をされてきたんだと思います。

照英 嬉しいです。そう言ってもらえると、すごく安心するというか、報われた気持ちになりますね。実際に世の中のお父さんお母さんもそうだと思うんですけど、子育てという、正解がないことを手探りでやってきている。なので、こんなふうに不安に思っている人も多いと思うんです。そんな人たちにも、この“好きこそものの上手なれ”という価値観は、励みになると思いますね。