■リーダーシップを取れる子と取れない子
照英 もちろん何のビジョンもなく子育てをしてきたわけではないんですが、私も手探りで子育てをしてきて、子どもたちはどう思っているんだろう、無理をさせていなかっただろうか、という不安もやっぱりあるんですよね。読んでいただいていかがでした?
杉山 とてもウェルビーイングな子育てになっているなっていう感想です。
照英 ウェルビーイングですか。
杉山 はい。つまり、「とても良い状態」ということ。本当に照英さんもお子さんたちも、ここまで家族で歩んできて、そして今ここにこうやって存在しているっていうことをすごく喜んでいるのが伝わってきたんです。これからの物語が楽しみな家庭かなって思います。
照英 そう言ってもらえると嬉しいですね。具体的にはどんなところでしょうか?
杉山 一番印象的だったのは、3人のきょうだいの在り方ですね。とても仲が良い。特に照英さんの家の場合、ご長男がポイントだったと思うんです。
照英 そうですね。小さい頃から「パパがいないときは家族を守ってね」って言い続けてきたのが、今もずっと彼の中で残ってると思うんですよね。
杉山 きょうだいって、子どもの頃は特に生まれた順番で差がありますよね。先に生まれた子のほうがいろいろできるのは当然のことなので、その子が下のきょうだいを守るとか大切にするということができるのは、本当に理想的な姿です。
照英 でもそれを負担に感じていたらかわいそうだなと思うこともあるんですよね。
杉山 確かに、合う、合わないというのはありますね。でも、ご長男は性格や人柄的に、それがすごくフィットしているなという感じがしました。ただ一方で世の中には、上の子であっても、面倒見のいい性格じゃなかったり、マイペースにやりたい性格だったりという子はいますので。そういう子だと、下の子の面倒を見るっていうのは負担に感じてしまうものですよね。
照英 そういう場合はどうしたらいいんでしょう?
杉山 まずは親の要望を伝えてもいいと思います。でもそこで大事になってくるのが、親子の対話です。
照英 やっぱり親と子のコミュニケーションが大事ですよね。
杉山 はい。特に小さい子は親の期待に応えようと頑張っちゃうものなんですが、それを負担に感じたときに「しんどい」と言える環境を作ってあげることが大切ですね。
照英 でも、そういうのってなかなか親も子も言いづらかったりしますよね。そんなときは、どんなタイミングで声をかけたらいいんでしょう? 具体的に子どもが発信するサインなどはあるのでしょうか?
杉山 もしキャラクター的に無理のない範囲のことを言われたとしたら、子どもたちは自ら率先してやりたがるはずです。でも、言ったのに全然やってないなんてことがあった場合は、それがその子のキャラに合わないのかもしれないなっていうサインです。
照英 そこに気づいてあげられるかが重要なんでしょうね。
杉山 もし上の子がそういうサインを出したときは、話しかけてフォローしてあげる。そして、親の望むきょうだい関係がしんどいようだったら、無理に過度な期待をするのではなく、たとえば「あなたはあなたらしくやるのを応援したい」って言ってあげたりすると、心を軽くしてあげられると思います。別に上の子でなくても、下の子がしっかり者だったら、そういう役目を下の子がやってもいいと思いますし。
照英 うちの長男は、たまたま合っていたんでしょうね。だからすんなりと良いきょうだい関係が築けたのかもしれません。でも、そういう子って、外の社会に出ても威張りがちになったりとかしないものでしょうか? 長男には、よく「そこをはき違えるなよ」ということは言っているのですが。
杉山 これも本を読んでの印象なんですけれど、大丈夫だと思いますね。ご長男は家族の中で、本当の意味でのリーダーシップを見つけられている子なのかなと見受けられました。本当のリーダーというのは、君臨するものじゃなくて、自分がケアすべき人たちが幸せかどうか、何か困ってないかどうかを常に気にかけているものです。勝手な想像ですが、これはお父さんをモデルに見つけたんじゃないかなって思います。
照英 そういうものですかね。子どもって何を見ているんだろうなって思う時ありますよね。
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照英の等身大の葛藤と、心理学者の温かな視点が交差する本書は、子育て中の全員に読んでほしい一冊だ。
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【後編】では、子育てのパートナーとの向き合い方、そして「子離れ」について、心理学者・杉山崇氏と照英が語り合う。《【後編】はこちらから》
照英(しょうえい)
俳優・タレント。1974年生まれ、埼玉県出身。元陸上競技・やり投の選手で、1996年の全日本学生選手権とひろしま国体のやり投で準優勝の経歴を持つ。自己ベストは73m90。大学卒業後、恵まれた体躯を生かし、モデルとして活動。1997年に単身渡米するなどの経験を活かし、数々のコレクションに出演を果たす。1998年、スーパー戦隊シリーズ『星獣戦隊ギンガマン』(テレビ朝日系)で俳優デビュー。2002年から約5年間、『水戸黄門』(TBS系)に風の鬼若役で出演。その後は俳優・タレント活動だけでなく、司会・デザイナーなど活動の場を広げる。私生活では2005年に結婚。2007年に第1子(長男)、2010年に第2子(長女)、2016年に第3子(次女)が誕生。3児の父としての経験を幅広く伝える活動も行っている。
杉山 崇(すぎやま・たかし)
心理学者。臨床心理士。神奈川大学人間科学部・大学院人間科学研究科教授。就職支援部部長。日本心理療法統合学会理事。子育て支援、障害児教育、犯罪者矯正、職場のメンタルヘルスなど、さまざまな心理系の職域を経験。心理学と脳科学を融合した次世代型の心理療法を目指す。2児の子育て中。主な著書に『読むだけで人づきあいが上手くなる。』(サンマーク出版)、『「どうせうまくいかない」が「なんだかうまくいきそう」に変わる本』(永岡書店)、『心理学者・脳科学者が子育てでしていること、していないこと』(主婦の友社)、『精神科医が教えないプチ強迫性障害という「幸せ」』(双葉社)など。
著者は陸上競技・やり投げの選手という元アスリートでタレントの照英。俳優として第一線で活躍していた著者は2007年に突然、国民的人気の時代劇シリーズ『水戸黄門』のレギュラーを降板。その理由は「子育てをしたいから」だった。子どもが苦手だったという著者が、なぜ、どのようにして子育てにハマったのか――その理由と、育児経験を経てたどり着いた「父親としての在り方」と、子どもだけでなく夫婦関係や動物との触れ合いで築いた「家族のかたち」について余すところなく語り尽くした渾身の書きおろしエッセイ。
