■難しかった夢に向かって突き進まない朝ドラ

 X上でも《気付けば最終週なんだ…今月はほぼ流し見だった…看護の話を深めてもらってたらもう少し見る気になれたかも。恋愛パート、多すぎて…》《出来ればあと2週くらい早く今週みたいな話に持っていってほしかったのが残念ではある》など、もっと看護婦の物語を期待していたという声が。

 また、《主人公が看護に命をかける理由が分かりにくいままだった》という指摘もあったが、まさにその通り。直美の場合は生きるためというのがあったが、りんの場合はそこまで切羽詰まった理由はない。どこかで「私は看護に生きる」と強く決意するエピソードがあればよかったのだが、看護に関するものは、どれもこれもふわっとしていて、全体が散漫な感じになってしまった。

 だが、もっと“夢に向かって突き進む”朝ドラ的な作りも、やろうと思えばできたとは思う。ダブルヒロインでシスターフッド要素入れてと、新しい試みがされた本作だが、恋愛パートが多かったり、廃娼運動が差し込まれたりと、あちこちに寄り道する作りも意図的だったのだろう。つまり、あえての“ゆるめ”な作りだった。

 しかし、その試みは低調な視聴率を見る限り、うまくいったとは言い難い。あちこち寄り道する描写は、高度な演出、脚本、演技が求められるが、主人公の心情がわかりづらかったり、微妙なシーンも多かった。そのような甘さが散漫に感じさせたのかも。また、看護というものが形になっていない段階、つまり衆知されていない世界を描いたため、そもそも伝わりにくい内容だったというのもあるだろう。

 狙いは面白かったが、やはり、朝ドラには“わかりやすさ”が大事ということだ。ただ、前期『ばけばけ』のように、前例のないゆるい雰囲気を押し出しながら、強烈なインパクトを与えた成功例もある。9月28日には、石橋静河(32)主演の次作朝ドラ『ブラッサム』がスタートする。こちらはどんな朝ドラを見せてくれるのだろうか。

(ドラマライター・ヤマカワ)

■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。