■瓶のコーラが持つ“おいしさの秘密”

 コーラに関しては、もうひとつ長年議論されているテーマがある。「瓶のほうがペットボトルや缶よりもうまい」という仮説だ。空水氏は、これを過去に実験で検証したことがあるという。

「同じ500mlの缶・ペットボトル・瓶を3℃まで冷やし、室温37℃の部屋で120分間の液温変化を比較しました。その結果、少なくとも私の実験では瓶に保冷上の優位性は確認できず、むしろ他より液温が高くなる場面もありました。“瓶は冷たさがキープできるから美味しい”というのは実は思い込みに過ぎないんです」

 とはいえ、空水氏自身も「コーラは瓶で飲むのが一番好き」だという。保冷効果がないにもかかわらず、なぜ瓶コーラはこれほど人々を魅了するのか。

「理由は3つあります。第1にガラスの高い気密性による“炭酸保持力”。第2に“190mlという絶妙な量”です。190mlは温度が上がって甘さに飽きる前に飲み終わる量。“もう少し飲みたい”ところで終わるから、最後までおいしかったという印象が残りやすいのではないでしょうか」

 そして第3の要素が、瓶という容器が持つ“体験の価値”だ。

「栓抜きが必要で重い瓶は不便ですが、王冠を開ける音、冷たいガラスの感触、瓶の口当たり、昔の食堂を思わせる懐かしさなどが“特別な一杯”を演出してくれる。味というのは成分表だけでなく、器や場所、記憶まで含めて完成していくものですから」

 たかがコーラ、されどコーラ──。どうやらコーラの世界は我々が思っている以上に奥が深そうだ。

空水りょーすけ(そらみず・りょーすけ)
国際クラフトコーラ連盟(FICA)元理事長、コーラ専門サイト『コーラ倶楽部』管理人。15年ほど前にアサヒ飲料「グリーンコーラ」と出会ったことをきっかけにコーラの世界にのめり込み、国内外のコーラを1000種類以上飲破。「コーラとは何か?」という疑問の答えを見つけるために活動している。コーラ識者として『マツコの知らない世界』(TBS系)への出演歴もある。