町の銭湯が、いま大きな節目を迎えている。

 東京都内の銭湯は2020年の499軒から、2025年には417軒まで減少した。そんな中、8月1日から、大人の入浴料金が550円から600円にアップ。ついに「ひとっ風呂600円時代」に突入したのだ。

 都内の銭湯すべてに入湯したという、コラムニストの中井仲蔵氏が、両手の指を使って計算する。

「東京都では令和に入ってからほぼ毎年、6回も値上げしています。平成31年(2019年)が460円でしたから、30%も上がった計算になりますね。併設してあるサウナにも入ると、一気に1000円を超えてしまうことも多く、 “これならスーパー銭湯と変わらないじゃん”という声も耳にします」

 この値上げの波は、他の地方自治体でも避けられないという。

 東京都浴場組合常務理事で、自らも品川区『中延温泉 松の湯』を営む伊東正博氏も頭を抱える。

「(東京都の場合)これまでは上がっても30円くらいだったのが、今回は一気に50円上がりました。お客さんにも、“高くなったね”と言われましたが、今は皆さん、慣れてこられたのか、あまり言われなくなってきました」

 日本の家風呂普及率が95%を超える現在は忘れられつつあるが、そもそも銭湯は、温泉やスーパー銭湯などの娯楽施設と違い、公衆衛生のためにも必要なインフラという面もある。生活に欠かせない設備なのだ。

 そのため、行政からは助成金が支払われる。各都道府県の中では料金が一律なのは、そういう背景がある。なお、全国を見ると、茨城350円、群馬・佐賀450円、大分430円など、銭湯の入浴料には開きがあるが、これは各地での物価や人件費などを勘案した値段のためだ。

 さて、今回の値上げと行政からの助成金で、銭湯経営が楽になったかといえば、そうとも言えないのが現状だ。

「燃料費や電気代だけじゃなく、消耗品など、何もかも値上げのスピードが早すぎて、追いつかないんです。うちのようにサウナをつけるなど、どこも付加価値をつけて営業努力をなさってますね」(前同)