■好打者攻略のカギはインサイドにあり!

 この差は結果にも表れています。甲子園を舞台に8月28日から行われた3連戦でも、タイガース投手陣は巨人打線をいずれも最少失点に抑え、3つとも危なげない勝ち方をしました。

 今季の天王山とも言える直接対決に照準を合わせ、先発ローテを組み替えた藤川球児監督の采配はお見事。それ以上に素晴らしいのは期待に応えた村上頌樹、大竹耕太郎、才木の投球です。

 登板間隔が空き、万全の準備ができたとしても、負けられないというプレッシャーは大きかったはず。しかし3投手とも力むこともなく、冷静に投げていました。これこそ最大の勝因だったと思います。

 注目度の高い試合で実力を発揮するのは本当に難しい。事実、2戦目では巨人の赤星優志が投げたボールが森下翔太の左手首を直撃し、球場は大ブーイングに包まれました。赤星がすぐさま謝罪したので、事態は事なきを得ましたが、私は赤星が少し心配です。

 彼の一番の武器は右バッターの懐を突くツーシーム。今回の死球に怖気づき、インサイドを攻められなくなると良いところが消えてしまいます。

 死球を当てられると打者はもちろん痛いですし、チームも痛い。監督が強く抗議するのも当然です。一方、強打者に対してはインサイドを攻めないと勝負になりません。私がマスクを被ったとしても、森下やテル(佐藤輝明)に対してはインサイドを厳しく攻めます。

 ただし、ひと昔前と比べ、投手の球速が上がり、死球の危険性が上がっているのもまた、事実。選手をケガから守るためにも藤川監督が提案するプロテクターの規格変更を含め、球界全体で話し合う時期に来ているのかもしれません。

矢野燿大(やの・あきひろ)
1968年12月6日生まれ。90年ドラフト2位で中日ドラゴンズへ入団。97年オフにトレードで阪神タイガースへ移籍すると、正捕手としてチームの躍進を支え2度のリーグ優勝に貢献。