日本競馬界のレジェンド・武豊が名勝負の舞台裏を明かすコラム。10月4日の凱旋門賞(パリ・ロンシャン競馬場)ではメイショウタバルに騎乗予定の、彼のここでしか読めない勝負師の哲学に迫ろう。

(以下の内容は2026年9月28日に寄稿されたものです)

 国際競馬統括機関連盟(IFHA)から、最新のワールドベストホースランキングが発表になりました。

 これは、今年1月1日から9月6日までに行われた世界の主要レースを対象としたもので、1位は香港のカーライジングで、2位がイギリスのオンブズマン。日本馬の最上位馬は、フォーエバーヤングとメイショウタバルの20位タイです。

 10月の第一日曜日。僕はこのメイショウタバルとともに、パリ・ロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞に挑みます。

 凱旋門賞に憧れを抱いたのは、競馬学校で、同期のエビちゃん(蛯名正義・現調教師)と夢を語り合っていた頃です。

 その夢がかなったのは、デビュー7年目。ホワイトマズルのオーナー、吉田照哉さんから騎乗依頼をいただけたのです。

 当時、僕は25歳。経験も浅く、技術的にも未熟で、思うような競馬ができないまま、6着でレースは終わってしまいましたが、“もう一度、この場に帰ってきたい”という思いを強く抱いたのを覚えています。

 勝ちたいではなく、勝てると思ったのは、3度目の挑戦となった2006年です。相棒は、今でも“この馬が一番強い”と思っているディープインパクト。あらゆるパターンを想定しても、負ける要素はないと信じて疑いませんでした。

 しかし、結果は3位入線(後に失格)。間違いなく勝てる能力を持ったディープを勝たせてあげることができなかったことが悔しくて……。何年もの間、夢の中で、うなされていました。

 挑戦し続けること11度。