■サボりの“プロ化”が進む労働環境
この「静かな休暇」と「静かな退職」は、似た名称でも意味合いが異なります。「静かな退職」は退職するわけではなく、昇進やキャリアアップを積極的に目指さず、“必要な業務をこなすだけ”という働き方を指すもの。一方の「静かな休暇」は、リモート勤務中にチャットツールのステータスをオンラインに保ったり、メールを予約送信し、勤務時間中に仕事をしているように見せかけたりする「サボりのプロ化」と言ってもいいかもしれません。
背景の一つにあるのが、休暇を取得することへの心理的なハードルが挙げられます。日本では、年次有給休暇は一定の条件を満たした労働者に認められた権利。厚生労働省によれば、6か月以上継続勤務し、全労働日の8割以上出勤していれば、年次有給休暇を取得できます。2019年4月からは、年10日以上の年休が付与される労働者について、企業に年5日の取得を確実にさせる義務も設けられました。しかし、2024年調査では、日本の年休取得率は65.3%にとどまっています。
「労働カルチャーの変化といえば聞こえがいいですが、単にサボっているだけですから、バレた瞬間、組織の信頼関係に大きな悪影響を及ぼすのは言うまでもありません。周囲を裏切ってチームワークを損なえば、職場全体の雰囲気悪化や意欲低下を引き起こしかねず、一度失った信頼を取り戻すのは簡単ではないでしょう。また、周囲を騙す行為を続けることで、罪悪感やプレッシャーが蓄積し、休もうとしたはずが反対に罪悪感でストレスが増す場合もあります。きちんと休暇を申請して仕事から離れるほうが、本来の休息につながると思うのですが……」(ビジネス誌編集者)
「静かな退職」に続いて登場した「静かな休暇」。言葉だけを見ると新しい現象にも思えますが、問われているのは、働く人が安心して休める職場をどうつくるかというシンプルな問題とも言えそうです。
戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。大手出版社でエンタメ誌やwebメディアの編集長を経てフリー。雑誌&webライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。