現役時代は阪神タイガースで2度のリーグ制覇、引退後は阪神や日本代表で指導者を務めてきた矢野燿大が“マスク越しの視点”から現在の球界を徹底解説。ここでしか聞けないレジェンドOBの“生の声”を本サイト編集部がお届けする。
8月の月間MVP(セ・リーグ野手部門)はタイガースのテル(佐藤輝明)が受賞しました。打率・330、8本塁打、18打点ですから、文句なしの成績です。しかもテルは、これが今シーズン3度目の受賞。調子の浮き沈みが少なく、開幕からコンスタントに打ち続けてきた証拠です。
惜しかったのは坂本誠志郎ですね。8月29日の巨人戦に勝利し、優勝マジック23を点灯させたタイガース。その快進撃を支えたのは間違いなく彼です。
8月にはホームランを7本放ち、16打点。4本の決勝打もありました。1か月で7本塁打なんて、クリーンアップを打つ強打者でも、そうそうありません。しかも坂本はプロ10年間で通算8本塁打。今シーズンも7月が終わった時点でわずか2本塁打でした。ところが、8月に入ると、突如としてアーチを量産。これだけの数字を残せる選手が下位にいると、打線の破壊力は一気に上がります。
確かに現代野球で、捕手に求められるものは一にも二にもリード力です。それでもプロ野球選手も元は野球少年。ヒットやホームランが出ると嬉しいのは当然です。私自身もそうでしたし、坂本も間違いなくそうだと思います。
もともと、坂本は「守りで貢献するんだ」という意識が人一倍高い選手です。だからこそベンチからも投手からも信頼されている。そのうえで、打撃でチームに貢献できれば、なお良いわけです。好調なバッティングはリード面にも好影響を及ぼしたことでしょう。
現に8月末に甲子園で行われた巨人との3連戦。ここでは坂本のリードがさえわたり、村上頌樹、大竹耕太郎、才木浩人がナイスピッチング。巨人打線を最少失点に抑え込み、3タテを食らわせました。
打棒好調の理由を本人は、巨人の坂本勇人からのアドバイスが大きかったと言っていますね。彼は左ピッチャーに対してゴロを打つことがなく、ほとんどフライやライナーを打っている。そのコツを聞いたところ、「ゴルフのドライバーのようなイメージで(スイングする)」と助言されたのだそうです。