■殊勲の一打に隠れた阪神が勝てる理由!

 この感覚が坂本に合っていたんでしょう。急に打球が上がるようになりました。バッティングというのは、ちょっとしたヒントでガラッと変わることがあります。しかし、その感覚をずっと維持するのもまた難しい。それほど繊細なものだということです。

 ここまでの坂本のホームランで一番印象的だったのは、8月27日の中日戦。1点差を追いかける8回一死一塁の場面で、橋本侑樹の150キロのストレートを迷いなく振り抜いた逆転の9号2ランです。打った瞬間にそれと分かる殊勲の一打でしたが、これには伏線があります。

 内野安打で出塁した前川右京の代走・植田海が、相手バッテリーの注意を引きつけた。ストライクを取りに来た1球を坂本が仕留めた形です。こうした足のスペシャリスト、あるいはバントや守備のスペシャリストがいるのも今季のタイガースの強みです。

矢野燿大(やの・あきひろ)
1968年12月6日生まれ。90年ドラフト2位で中日ドラゴンズへ入団。97年オフにトレードで阪神タイガースへ移籍すると、正捕手としてチームの躍進を支え2度のリーグ優勝に貢献。