■ボカロファンが懸念するハッシュタグの「検索汚染」

 ボーカロイド「KAITO」のリスナーが大きな拒否反応を示す理由は、名前表記そのもの以上に、「タグ」による「検索汚染」だ。ITライターが説明する。

「検索汚染とは、インターネット上で何か調べる際、本来知りたいこととは無関係の内容が表示されてしまい、自分が欲しい情報になかなかたどり着かなくなる現象を指す言葉です。

 推し活をするファンはSNSで情報収集をしたり、ファン同士で盛り上がったりしますが、特にボーカロイド特有の事情として、複数のプロデューサーが楽曲を作るため、リスナーにとってタグは、新曲やイラストなど新たな作品を発見する重要な手段の一つ。つまり、これまで自分たちが使ってきた《#KAITO》に大きな勢力がなだれ込んでくると、情報にアクセスしづらくなる懸念があるというわけです。

 もちろん、高橋さんのファンにとっても情報が混在する現象は容易に起こり得る。どちらのファンにしても、タグに紐づく情報が“求めていない”ほうの内容だと“何これ?”となってしまうでしょうね」

 そうしたなか、ボカロ黎明期から長年にわたり、ニコニコ動画を中心に「KAITO」を用いたボカロ曲の投稿を続けていたマスターの一人、「まえぴー」さんは4日、自身のXアカウントにて、

《ニコニコ動画における、私のKAITO楽曲、及びボカロ楽曲を全て非公開にさせて頂きました。いつもご視聴頂いている皆様には大変ご迷惑をおかけいたします。 理由があっての事ですが、やはり此処ではあまり詳しくは申し上げません。 十数年の御愛顧ありがとうございました》

 と、自作の楽曲を非公開にすることを発表。「KAITO」を巡る騒動がX上で大きく拡散するなか、当サイトの取材に対しては、

「私としては、誰かを批判したい意図ではなく、自分の作品を今後どのように扱うかを自身で判断した、というのが本旨です。また、ファン同士が互いを傷つけ合うような状況を見て、そこから静かに距離を置きたいと感じたことも理由の一つです。現在は、この件についてこれ以上議論を広げることよりも、少し距離を置いて静かに過ごしたいと考えております。ご理解いただけますと幸いです」

 とのコメントを寄せた。他方、ギタリストでやはり「KAITO」を使った楽曲を発表してきた「刹那P」は同日、

《今までは、「1年に2~3曲ぐらいのペースで出せればいいや」とのんびり構えていたが、そうも言っていられなくなってきた。これからは月1でKAITO新曲を出す事を目標とする。 曲だけできていて、歌詞がまだ無い曲が沢山あるので、行けると思う。 圧倒的物量で押し流す》

 と、今回の状況を受けてか、今後は活動を活発化させる意向を示した。

「X上では双方のファンによる激しい応酬が続いています。こうした状況を鑑みてか、高橋さんのほうのタグについては《#髙橋海人KAITO》とする動きが出ています。しかしながら、公式SNSの投稿でもまだタグが統一されていないため、高橋さんのファンのなかにも、運営の対応を嘆く声が見られていますね」

 騒動が大きくなるなか、クリプトン・フューチャー・メディアは5日夜、「初音ミク」公式Xにて騒動に言及。

《『KAITO』という名称やハッシュタグについて、皆さまからさまざまなお声をいただいております。同じ名称が使用されることによるハッシュタグ等の重複を完全に防ぐことは仕組み上困難であり、今後も検索やSNS上で双方の情報が混在する場面が生じるかと存じます》

  とした上で、

《それぞれの『KAITO』を応援する皆さまがお互いの存在や活動を尊重しながら、気持ちよくコンテンツをお楽しみいただけることを願っております》
《皆さまとともに歩んできた『KAITO』の文化を大切にしながら、 互いを認め合える、優しいコミュニティであり続けられるよう見守っていただけますと幸いです》

 などとコメントした。