■“素人協力型番組”制作の難しさを元キー局Pが解説

 2023年6月の『せっかくグルメ』では日村が宮城県仙台でロケを行なったが、協力者の女性が、よく行く和食レストランとして全国チェーンの「ゆず庵」を紹介。日村は店を訪れ、笑顔で食事を楽しんでいた。

 また、同年9月にWEBメディア『ENCOUNT』のインタビューを受けた番組の総合演出は、日村が過去、小学生の女の子に声をかけ、5分ほど話して打ち解け、その子の家に行き、不在だった父親の職場まで訪ねて行って父親に店を紹介してもらったこともあったと回顧。日村について、長年の経験があるからこそ、相手と距離を縮められるかどうかの肌感覚やアンテナがあるのではないかと、ロケへの姿勢を絶賛していた。

「日村さんにはゆっくりと体調を整えてもらいたいところですが、『せっかくグルメ』は相変わらず大人気。日曜のゴールデン・プライム帯は『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)、『ポツンと一軒家』(テレビ朝日系)、『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ系)と人気番組がひしめく激戦区。

 そんななかにあって『せっかくグルメ』はしっかりと視聴率を取る人気番組で、TBSの看板番組でもありますよね。件の10月4日の放送回も世帯視聴率8.5%(すべてビデオリサーチ調べ、関東地区)、個人視聴率5.8%と、世帯3.7%・個人2.8%だった裏の『鬼レンチャン』2時間SPよりもかなりよかったですからね。

 それに、同番組は親子で見られる明るい番組ですし、番組に悪いイメージを持ってもらいたくはない。そして、ロケ先の一般の人の協力がないと成り立たない番組でもありますよね。そうした事情もあり、異例の声明を出すことになったのではないでしょうか」(制作会社関係者)

『せっかくグルメ』のような“素人協力型”の番組を制作・放送する難しさについて元テレビ朝日・プロデューサーの鎮目博道氏に話を聞いた。

「街の声、地元の人へのインタビューをもとに飲食店やトレンドスポットに取材に行くというのはバラエティや旅番組でよく使われる手法で、テレビの基本中の基本とも言える取材手法です。ADがディレクターデビューする際に最初にやらされる取材のやり方ですし、この手法を軸に作られている番組は多いですよね。

 それだけテレビマンなら誰もがやることなので簡単に思われがちなのですが、ここ最近はSNSが普及し、取材対象者が特定されたり炎上したりするケースも増えているんです。近年は、これまで定番だった手法が難しくなってきているわけです。

 昔ながらの基本中の基本の手法で、制作サイドは気軽にやりがちですが、しっかり守ってあげないと最悪の場合、取材対象者の身に危害が及ぶことにもなってしまう。そういったリスクも内包していますよね」(以下、鎮目氏)

 今回、『せっかくグルメ』が物議を醸したのは、編集面の影響も大きいのではないかと鎮目氏は指摘する。

「番組は《10分以上お考え頂きましたが》と説明しましたが、テロップが入っていたら印象は違ったはずです。また、炎上を防ぐためには取材対象者の顔を隠す、特定されないようにするということもできるにはできますが、『せっかくグルメ』は明るいバラエティですからそういうわけにもいきません。

 それにこの手法ですと取材対象者に意図的に虚偽の情報を言われても、その場で制作サイドが真偽を判断するのは難しい。これも別の意味で怖いですよね。ですから、危うい手法ではあるのですが、作り手は気軽にやってしまいがちなんです。

 そして、もちろん『せっかくグルメ』の話ではなく一般論ですが、こうした街頭取材という形式では、事前に依頼していた人を偶然見つけた体にしてインタビューする、といった“やらせ”も理論上は可能です。編集でインタビューをつぎはぎして、制作サイドの意図する内容に持っていくこともできます。実際、『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)では、街頭インタビューを意図的に編集したことが大きな問題になりました」

 2025年3月放送の『夜ふかし』では街頭インタビューに応じた中国出身の女性の「中国ではカラスを食べる」という趣旨の発言をオンエアしたが、日本テレビは後日、《実際には女性が「中国ではカラスを食べる」という趣旨の発言をした事実は一切なく、別の話題について話した内容を制作スタッフが意図的に編集し、女性の発言の趣旨とは全く異なる内容になっていました》と謝罪するに至った。

「『せっかくグルメ』で行われているような取材手法はテレビ制作の現場に広く浸透していて、これまで大きな問題なく続けられてきたからこそ、制作側も従来どおりの感覚でやってしまいがちです。

 今回の件で言えるのは、作り手が慣れた手法だからといって従来の感覚のままでいると、思わぬ問題を招く可能性があるということと、SNSの浸透で時代が大きく変わり、作り手の意識もアップデートする必要があるということではないでしょうか」

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)