現役時代は阪神タイガースで2度のリーグ制覇、引退後は阪神や日本代表で指導者を務めてきた矢野燿大が“マスク越しの視点”から現在の球界を徹底解説。ここでしか聞けないレジェンドOBの“生の声”を本サイト編集部がお届けする。

 タイガースが巨人との激しい競り合いを制しましたね。1950年の2リーグ制以降では、球団史上初となるリーグ連覇です。

 8月の終わりにはマジックを点灯させ、一時は独走かと思いましたが、9月中旬には今季最長となる7連敗。この頃は私もハラハラしましたが、一度もマジックを消さずに首位を守り切ったところに、今季のタイガースの底力を感じました。

 選手の個人成績を見ても、タイガースの強さは際立っています。主軸を打ったテル(佐藤輝明)や森下翔太、大山悠輔が打撃部門の上位を独占。投手陣も勝利数、防御率、奪三振数の主要タイトルを髙橋遥人、村上頌樹、才木浩人の3人で分け合いました。これだけの戦力があれば、優勝して当然と言う人もいます。しかし、最後の最後まで何が起こるか分からないのが勝負の世界。熾烈な優勝争いを経験したことは、選手一人一人の財産になったはずです。

 そんな中、優勝の立役者を挙げるなら、打つほうでは文句なしにテルですね。

 投手陣では遥人でしょう。16勝3敗の成績が示すように、今シーズンは無双状態。一人でチームの貯金の7割以上を稼いでいるのだから、見事のひと言です。

 もう一人は開幕投手も務めた村上です。10月1日に甲子園で行われた、今季最後の巨人戦でも先発を任されると、5回1失点の好投で試合を作りました。1年間、故障なく投げ続けてくれるというのは、監督にとってもチームにとっても一番ありがたい。投球回数は両リーグ1位の180回超だし、防御率だって1点台。勝ち数こそ10勝ですが、味方の援護に恵まれていたら、もっと増えたでしょう。

 この3人の中で、私があえてMVPに選ぶとしたら、テルですね。

 やはり三冠王のインパクトは絶大です。過去に達成したのは8人だけ。しかも、テルの場合、休むことなく試合に出続けての三冠王。本塁打、打点、打率の3部門に加え、得点、安打、二塁打、塁打数、OPSなど主要打撃部門を総ナメです。これだけの成績が残せたのは、テルがひと皮剥けた証拠です。