■元キー局報道プロデューサーが指摘する“問題点” NHKの回答は

 この放送および番組中における市販品の取り扱いを、元テレビ朝日で報道番組プロデューサーも務めた鎮目博道氏はどう見たか。

「想定視聴者を“ある程度ODと距離をおける人”に限定してしまっていますよね。ふとした瞬間にODに寄ってしまいそうな人、子どもたちが見るかもしれないという視点が完全に抜け落ちているように思います」(鎮目氏、以下同)

 番組では、ODをめぐってSNSに投稿された実際の画面のスクリーンショットが複数紹介されたうえ、ODする薬のパッケージは複数回写し出された。確かに赤裸々な実態ではあるが、鎮目氏は「どう考えてもおかしいと思う」と強く疑問を呈する。

「SNSでOD情報が回る時代と番組で言っているとおり、Nスペで紹介された情報もSNSで取り上げられ、実際に番組を見ていない子のもとにも届く可能性は十二分にある。番組では、SNSが“ODの入口になっています”というナレーションが入っているのに、自分たちがその連鎖を招くことは考えなかったのか。

 問題は、あれを見て子どもたちが“だったらやめよう”という作りになっておらず、大人は大人で、どうしたらいいのかと考えさせる構成になっていないことです。実際のSNS投稿やぼかしのない市販薬などでリアリティを妙に打ち出すだけで、ODという社会問題をなんとかしようという思いはないように私には感じられました」

 一方、TBSの『報道特集』は8月29日、「“生きるためにやる”――青い舌の少女たち 高校生の70人に1人が経験、死に至るケースもある『オーバードーズ』彼女たちを救うには」という特集を放送。同特集でも薬の実物映像は使われていたが、市販薬のパッケージを大きく映す構成ではなかった。

「医師による処方薬ならまだしも、市販薬は簡単に手に入るのが大きな問題になっているわけで、僕がデスクなら絶対に箱や薬品名はぼかしますね。

 そもそも市販薬は用法用量を守って服用するのが前提のもので、生活に不可欠です。そもそも薬に罪はなく、ODの文脈で出せば民放ならスポンサーに不利益を与えることになりかねません。日頃は商品名をできるだけ隠して放送するNHKがあえてそうすることを“覚悟”と見るか、“暴走”と見るか。もちろん、反響を起こして議論させたかっただろうなとは思うのですが、その方法として適していたのか。

 薬品の映像には、テロップとして薬は用法用量を守るようにと表示する処理がありましたが、そんなの箱にだって書いてある話。近年の報道では、自死についての表現はかなりセンシティブになっているのに、ぼかしなしは配慮がない。僕は明らかに間違っていたと思います」

 本サイトがNHKに対し、「Nスペ」において薬の名前にぼかしを入れなかった理由や批判の声をどう受け止めているかについて聞いたところ、

「番組は、オーバードーズの実態を伝え、その危険性を報道することが主な目的です。身近な薬でも過剰摂取は健康上の深刻な事態につながるおそれがあることが分かるよう、薬の名前が分かる映像を使用しましたが、薬を紹介する際は、『薬は用法・用量を守ってお使いください』と度々、字幕で注意喚起をしました」

 という回答があった。