■カンニングや盗撮などには早急な対策が必要

「歩いているときに頭と一緒に文字が揺れてしまうので、字がブレて読みづらいんですよ。音声で道案内してくれるタイプもありますが、こちらは渋谷の街中で試したら周囲がうるさくて案内音が聞こえませんでした。それに“南に向かってください“とか言われても、どっちが南で北かなんて咄嗟にはわからない。結局、スマホの地図を見ることになりました」

 一般ユーザーがもっとも期待しているであろう“翻訳機能”についても聞いてみた。字幕なしで洋画を観たり、外国語の歌詞をリアルタイム翻訳することは可能なのか?

「無理ですね。映画の場合、セリフをしゃべり終わってから翻訳結果が表示されるので、どうしてもワンテンポ遅れてしまう。通常の字幕映画みたいにはならないんですよ。音楽は人の声以外にもたくさんの音が入っているため、聞き取り精度が悪くなります」

 逆に目の前の外国人と1対1で会話するような状況だと、ストレスなく使うことができるという。

「海外とのリモート会議にも向いているでしょうね。複数人数での会話も問題なく聞き取れるはずです。ただ、問題は向こうの言っていることがわかったとしても、こちらは相手の言葉を話すことができないということ。意思疎通が一方通行なんですよ。向こうもAIメガネをかけていれば大丈夫なんですけどね」

 まだ黎明期に過ぎないAIメガネだが、海外では早くもこれを使ったカンニングや盗撮が社会問題化している。

「AIカメラの特徴は、撮っていることが相手にわからないこと。その便利さの裏返しとして、盗撮被害が生じている。機種によっては10分ほどの動画も撮れますから、これに関しては早急な対策が必要かもしれません」

 どうやら残念ながら現段階では課題の多いAIメガネ。価格は機能によってまちまちで、10万円以上するものから1万円台のものまで販売されている。外国語が日常的に飛び交う環境にいる海外赴任者、留学生、海外旅行が好きな人にとってはコスパに見合うかもしれないが、“誰もがかける必需品”になるには多くの壁を越える必要がありそうだ。

小寺信良(こでら・のぶよし)
1963年、宮崎県出身。18年間テレビ番組編集者を務めたのち、文筆家として独立。家電から放送機器まで幅広い執筆・評論活動を行なう。一般社団法人「インターネットユーザー協会」代表理事。2015年から4年間、文化庁文化審議会専門委員を務める。著書に『仕事ですぐに使える! DaVinci Resolveによる動画編集』(オーム社)など。