■『VIVANT』には劇場版報道もあって――
また、実際にコラボすることになれば、『VIVANT』サイドにもメリットはあるという。
「『VIVANT』は地上波以外の展開に力を入れてるドラマですよね。だから『紅白』で取り上げられれば、『VIVANT』やTBSを見ていない人にも全国的に浸透するわけで、良い宣伝になる。同ドラマの関係者からすれば、今年はぜひ乗っかってほしいところかもしれません」(前出の鎮目氏、以下同)
『VIVANT』を巡っては、劇場版の公開も取り沙汰されている。8月25日配信の『東スポWEB』は、第2シーズン終了後の12月4日に劇場版を全国公開する方向で調整が進んでいると報じた。報道通り映画が公開されるのであれば、『紅白』でのコラボの宣伝効果は大きそうだ。ただし、現時点でTBSなどから劇場版について正式な発表はない。
そして『紅白』には、次年度の大河ドラマ俳優がゲスト出演することが多く、『VIVANT』のメインキャストである松坂桃李(38)は27年放送予定のNHK大河ドラマ『逆賊の幕臣』の主演俳優でもある。それも『紅白』と『VIVANT』のコラボにつながりそうだという声は多いが――、
「松坂さんが出る可能性は十分あると思います。ですが、各局が人気者をぐるぐる使いまわしたりすると、テレビ局同士で癒着してる感じで、見ていてシラけるかも。NHKからすれば、今年大きな話題になった『VIVANT』と来年の大河ドラマの両方で活躍する松坂さんはぜひ出演させたいでしょうが、そういうことばかりやってると宣伝番組のようになってしまう。だから、個人的には止めた方がいいかなと思います」
また、今回に限らず『紅白』やNHKの姿勢に違和感を唱える声も少なくないが、鎮目氏はこう分析する。
「まず、『紅白』は日本を代表する歌番組で、その年の1年間の世相を総まとめする国民的番組。それが番組としての存在意義ですよね。だから、もっと歌や歌手を文化としてとらえたうえで、“社会現象を起こした歌”や“日本という国の世相”についてフォーカスするなど、社会の事象をしっかりと捉えて作ってほしいですね。朝ドラや大河ドラマなどの自局、そして他局の番宣などを入れるのはどうなのかと……」
さらに、NHKの番組が昔に比べて“民放化”しているという意見には「間違いないです」と指摘。こう続ける。
「昔のNHKは、視聴率を気にせずに公共放送としてやる意義のある番組を制作していました。そもそも視聴率は民放がスポンサーを集めるためのシステムですから、受信料で成り立っているNHKには関係がなかったんですよね。
ところが、近年では、若い人がテレビを見なくなり、受信料を払わない人も増えた。そのため、民放と同じように“視聴率が取れる番組がいいんじゃないか”と考えているところがありますよね。かつてのNHKらしさは、一部のドキュメンタリーにしか残っていない気がします。
80年代のNHKは本当に独自路線をいっていました。民放にはマネできないし、民放のマネもしない。だから、民放側から見ても尊敬されていたんですが……。最近は民放と似たような番組を作っていますよね。しかも、予算は国民からの受信料だから余裕があるわけです。その意味でも制作費に苦労している民放からすれば、腹が立つ存在になってきているところはあると思います」
恒例の『けん玉チャレンジ』に「ドラムが出てくるのでは?」(スポーツ紙記者)といった声も上がる今年の『紅白』。果たして、どこまで『VIVANT』感が漂うものになるのだろうか――。
鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)