■現地で何を深く学べるか
「実際に市営バスが満員で乗車できず、予定していた便を見送らざるを得ないケースが頻発。パンク状態に陥った交通事情により、分単位で時間を設定する班別行動が機能不全に陥るなど、学校現場や旅行会社からは“これ以上、対応しきれない”と悲鳴が上がっています」(旅行代理店関係者)
ネット上でも「日本人が子ども時代に古都を旅するのは大切なこと」と伝統的な価値を尊重する声がある一方で、「移動リスクが高すぎてスケジュール通りに動けない」「市バスの混雑が激しすぎて敬遠したほうがいい」といった意見も聞かれます。
こうした現場の窮状を受け、全国の学校や教育委員会が従来の定番ルートから舵を切る動きも。目的地選びの新たな軸として浮上しているのが、「現地で何を深く学べるか」という教育的なテーマ性です。例えば九州エリアでは、長崎での原爆資料館見学や映画館を活用した被爆体験講話による「平和学習」、熊本での震災跡地を巡る「防災・生命の学習」が積極的に導入されています。また、四国ではうどん作りやカツオのたたき体験を通じた「食文化・体験学習」、北陸や東北では人ごみを避けて地域固有の伝統工芸や歴史にじっくり触れる「文化学習」、そして神戸などの近隣都市では「SDGsや先進技術をテーマとした企業訪問」などを組み込む学校も増加。いずれも生徒が受け身にならず、能動的に実体験を重ねられる貴重な学びの機会となっているようです。
もちろん京都市側も手をこまねいているわけではありません。修学旅行向けの情報サイトを通じた混雑回避モデルコースの提案や、文化・伝統産業体験プログラムへの支援策を打ち出すなど、受け入れ体制の再整備に力を注いでいます。
限られた予算と日程の中で、生徒にどのような学びと思い出を提供できるのか――。「脱・京都」を模索する取り組みは、今後いっそう加速していきそうです。
戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。大手出版社でエンタメ誌やwebメディアの編集長を経てフリー。雑誌&webライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。