■魅力再発見で台数を増加させるスポットも!
もはや絶滅危惧種と化しているレトロ自販機だが、逆に台数を増加させているスポットも存在するようだ。
「『中古タイヤ市場』以外だと、『岐阜レトロミュージアム』(岐阜県山県市)や『なかよし自販機コーナー』(栃木県那珂川町)も品揃えが豊富ですね。『丸美屋自販機コーナー』(群馬県みどり市)は製造工程が丁寧だから、何を食べても美味しいですよ。うどんもトーストも一味違うなと唸らせられます」
こうしたレトロ自販機スポットが、テレビやYouTubeで紹介されるようになったことで、若い世代が”再発見“するケースも増えてきた。
「今は社会から“日本らしさ”がどんどん失われていますからね。加えてデジタル化が急速に進んだことで、昭和的なアナログの味わいを見直す機運も高まっている。ここに来てレトロ自販機が注目されるようになったのは、昭和世代がノスタルジーに浸っているだけでなく、Z世代にも新鮮に刺さっているんだと思いますよ」
これまで数多くのレアな自販機と対峙してきた魚谷氏。前出の『中古タイヤ市場』で見つけた復刻版カレーライス自販機には度肝を抜かれたという。
「ボタンを押すと、温めたごはんにカレーがかかった状態で出てくるんですけどね。お米の部分はスチームで温め、別室で温めたレトルトカレーの袋を機械が切って、それをごはんにかけるという仕組みなんです。だけどこの自販機を復活させる際、カッター部分が劣化していてレトロパックがなかなか切れなかった。頭を悩ました齋藤社長は、なんと刀の専門業者に作ってもらったそうですよ」
すさまじい執念には驚かされるばかりだが、考えてみれば昭和の自販機も当時は最先端のハイテク機器。それが半世紀近くの時を経て再び動き出すのだから、胸が熱くなる。
「いつまでもあるとは限らないのがレトロ自販機。運よく見つけた場合は、素朴な昭和の雰囲気も込みで味わっていただきたいです。自販機グルメの醍醐味は機械から食べ物が出てくるという非日常感に加え、食べる場所の雰囲気も含めたものだと思っていますから」
タイパやコスパが最優先される現代社会において、レトロ自販機が放つ魅力は色褪せることがない。コインを投入すれば、温かい昭和のロマンが今も湯気を立てて待っている。
魚谷祐介(うおたに・ゆうすけ)
写真家。文筆家。音楽家。多岐に渡り活動するマルチクリエイター。東京都杉並区出身。「風情」と「味わい」を求めて日本全国を巡り、取材、記録する“旅人”でもある。『日本懐かし自販機大全』シリーズ、『侘寂温泉』シリーズ(ともに辰巳出版)などの著書に加え、ギター&ベース読譜アプリ『FRETBOARD MASTER』の開発にも携わる。YouTubeチャンネル「懐かし自販機~味わいの昭和レトロ自販機コーナー」。