■ヘリによって有料と無料がある

 しかし、山梨県の目的はヘリの運航費を登山者から徴収することではなく、救助が必要な無謀な登山そのものを減らすこと。そのため、登山届の提出に加え、保険への加入や装備、登山計画などを整えていた人については、救助手数料を減免する方向で検討しているのだという。

「登山者にきちんと準備をしてもらう。そうした行動変容につなげ、結果的に無謀な登山やヘリによる救助を減らしていきたいと考えています。準備をした方には負担がかからない方向にすることで、安全な登山へ誘導していくという考え方です」(同)

 ところが、ここには一つ気になる点もある。同じ富士山で遭難しても、「誰に助けられるか」で費用負担が変わる可能性があるのだ。今回、有料化の対象となるのは県の防災ヘリ。これに対し、県警ヘリによる救助は警察活動として行われるため、引き続き無料のまま。

「防災ヘリと県警ヘリでは制度上の根拠が異なります。実際の救助では、機体の運航状況や整備状況、天候などを踏まえ、それぞれの機関が連携して対応する形になります」(同)

 つまり、同じ場所で遭難しても、防災ヘリで救助されれば費用負担が発生する一方、県警ヘリや地上救助なら無料となるケースも考えられる。こうした救助費用の負担のあり方については、国レベルでの議論が必要となりそうだ。

 もう一つの施策は、4登山ルートの一つ、「吉田ルート」において通行料という形で登山者に負担を求める制度だ。

 山梨県は現在、7月から9月の開山時、1人につき4000円の通行料を徴収しており、2026年度の通行料収入は、約7億円になった。

 吉田ルートの通行料や登山者の受け入れ、安全対策などを担当する山梨県富士山観光振興グループの担当者はこう説明する。

「以前は県の一般財源などを使って安全対策を行っていましたが、現在は通行料収入を主な財源として活用しています。救護所の運営や医師の配置、登山者を見守る指導員の配置、ゲートの警備など、安全に登山していただくためのさまざまな対策に充てています」

 この通行料と規制には、すでに一定の効果も表れている。

 山梨県が2024年に吉田ルートでゲート規制と2000円の通行料を導入したところ、夜間登山者は前年から95%減少。救急搬送件数も41%減ったという。

 通行料に続き、登山届とヘリ救助費まで踏み込む山梨県。新制度が、無謀登山をどこまで減らせるのか。その効果が注目される。