■AI詐欺電話にはアナログな「暗号」で対抗

 手口がバージョンアップしているのは詐欺も同様だ。9月、イタリアではAI音声を用いた詐欺電話事件が発生。

「イタリア最大手の銀行が被害者で、なんと被害額は170億円。同行の会長と弁護士の音声をAIに学ばせて複製。会計担当者をだまして大金を送金させたそう」(犯罪ジャーナリスト)

 このAI音声による詐欺電話は、すでに欧米では被害が拡大中だ。ネットやSNS上にアップされた動画から音声を拾えば、簡単にニセ音声が作れる。前出の小川泰平氏は、「これから一般人の声を使った詐欺事件が出てくる」と警鐘を鳴らす。

「家族や知人の声になりすます事例が今後、考えられます。つまり、オレオレ詐欺のもっとリアルな形です。

 これの怖いのが、会話に対応できること。最近の特殊詐欺だと、質問を重ねると答えられなくて電話を切る犯人が多いんですが、AIなので内容にも対応でき、見分けるのは困難です」

 声も内容も本人同然という恐怖。対策として、小川氏は“暗号”を推奨する。

「“山”と言ったら“川”と答えるように、家族間だけで分かる暗号を決めておくんです。切迫した電話の際には、それを用いるのが現状、有効です」(前同)

 詐欺の最新手口は他にも。奈良県に住む80代女性宅に逮捕状がレターパックで送付され、それをきっかけに現金4800万円をだまし取られたという。

「そもそも、逮捕状は見せるもので、渡すものではありません。一般の人が逮捕状を知らないことを突いた手口ですが、大事なのは、落ち着いて調べること。

 一般の人があまり遭遇しないケースが犯行に使われますが、そういうときは防犯対策としてだけでなく、私生活のためにも調べるべきです」(同)

 進化する詐欺被害に、くれぐれもご用心を。

小川泰平(おがわ・たいへい)
1980年4月から2009年12月まで神奈川県警察の警察官を務め、警察局長賞や警察本部長賞などを受賞。現在は、犯罪ジャーナリストとして多数のメディアに出演中。