今年は例年よりも早く、インフルエンザが流行した。厚生労働省は8月28日、全国でインフルエンザが流行入りしたことを発表。これは1999年以降、2番目に早い記録だという。
これから気温が下がり、例年インフルエンザが流行する冬本番を迎えるだけに、さらなる感染拡大にも警戒が必要だ。小学生の子どもを2人育てる母親は、冬に向けた不安をこう話す。
「夏にインフルエンザの流行で学級閉鎖になりました。寒くなるこれからまた感染が広がるんじゃないかと心配です。子どもが2人いるので、どちらかが罹ると家族全員に感染ることもありますし、早めに予防接種を受けさせたいと思っています」(小学生2人の母親)
そんな保護者にとって、気になる選択肢がある。鼻にスプレーするだけで接種できるインフルエンザワクチン「フルミスト」だ。日本では2024年から使用が始まり、対象となるのは2歳以上19歳未満。左右の鼻の穴にワクチンを噴霧するだけで、原則1回の接種で済むという。
注射針を使わず、接種時の痛みもない。そう聞くと、従来のワクチンよりも魅力的に感じるが、気になるのはその効果だ。鼻にスプレーするだけで、本当にインフルエンザを予防できるのだろうか。また、注射型と比べて安全性に違いはないのか。医療ジャーナリストの牧潤二氏に、フルミストの仕組みやメリット、接種する際の注意点について詳しく聞いた。
まずは、従来の注射型ワクチンとフルミストでは、何が違うのかを尋ねた。
「従来の注射型インフルエンザワクチンは、感染力を失わせたウイルスを使う『不活化ワクチン』です。一方、フルミストは病原性を弱めた生きたウイルスを使う『弱毒生ワクチン』と呼ばれます。ただ、生ワクチン自体は珍しいものではなく、麻しんや風しん、水痘、おたふくかぜなどのワクチンにも使われています」
そして両者の大きな違いは、免疫がつくられる仕組みにあるという。
「フルミストは左右の鼻の穴に噴霧することで、鼻の粘膜に免疫をつくるのが特徴です。もちろん全身性の免疫もつくられますが、インフルエンザウイルスは主に鼻や口から侵入するため、その入り口となる鼻の粘膜で免疫をつくることには意義があります。一方、注射型は全身性の免疫が中心となります」
鼻からの感染を防ぐ仕組みを持つフルミストのほうが、注射型よりも高い予防効果を期待できるのだろうか。
「現在までの国内外の研究成績では、フルミストと注射型で、インフルエンザの予防効果に明確な差はないとされています。フルミストのほうが効果が長く続くといわれることもありますが、それを裏付ける十分なデータもありません」
つまり、注射をしなくて済むからといって、予防効果が劣るわけではない。一方で、フルミストのほうが優れているとも言い切れないということだ。では、フルミストを選ぶメリットはどこにあるのか。
「やはり、注射による痛みや恐怖心といった心理的な負担を減らせることですね。注射部位が腫れるといった副反応もありません。また、原則1回の接種で済むことも、子どもや保護者にとっては大きなメリットでしょう」
特に注射を嫌がる子どもにとっては、接種方法そのものが選択の決め手になりそうだ。ただし、痛みがないからといって、誰でも安心して接種できるというわけではない。