■接種できない人も
フルミストは注射針を使わないものの、ワクチンである以上、副反応が起こる可能性はある。牧氏によれば、その症状には注射型とは異なる特徴があるという。
「フルミストで比較的多い副反応は、鼻水や鼻づまりです。国内の臨床試験では過半数に見られましたが、比較的軽い症状が中心でした。そのほか、咳や喉の痛み、発熱、倦怠感などが出ることもあります。鼻から接種するため、いわゆる鼻かぜに似た症状が多いのが特徴ですね」
一方、注射型では接種部位の痛みや腫れなどが比較的多く見られるという。副反応の種類は異なるが、牧氏は両者の安全性について「全体としては同程度と考えられています」と説明する。
ただし、フルミストは病原性を弱めた生きたウイルスを使うため、接種に適さない人もいる。
「免疫機能が低下している人や、免疫抑制剤・抗がん剤などによる治療を受けている人、ゼラチンアレルギーがある人などは、フルミストを避ける必要があります。また、喘息がある場合も注意が必要です。持病やアレルギーがある場合には、接種前に医師と相談してほしいですね」
さらに、フルミストには接種後、弱毒化したワクチン由来のウイルスが鼻汁などに排出される可能性があるという。
「ほかの人に感染させる“水平伝播”の可能性は極めて低いものの、ゼロではありません。そのため、同居家族に重度の免疫不全の人がいる場合などは、注射型を選ぶことが勧められます。ただ、フルミストを接種したからといって、学校や幼稚園、保育園を休む必要はありません」
もうひとつ、保護者が気になるのが費用面だろう。牧さんによれば、接種費用の目安はフルミストが7000~1万円程度、注射型が1回3000~5000円程度。数字だけを見ると、フルミストのほうが割高に感じられる。
「ただし、13歳未満の子どもは、注射型の場合、原則として2回接種となります。そのため、合計するとフルミストと費用がほとんど変わらない場合もあるんです。また、自治体によっては助成制度もありますので、実際の自己負担額を確認して比較するとよいでしょう」
費用だけでなく、通院回数や子どもの負担も含めて考える必要がありそうだが、結局、どちらのワクチンを選ぶのがよいのだろうか。
「まずは、フルミストを避けるべきケースに当てはまらないかを確認することが大切です。そのうえで、比較的健康で注射が苦手な2歳以上19歳未満の子どもであれば、フルミストを第一選択にしてもよいと思います。特に、注射型では原則2回接種となる13歳未満の子どもには、メリットがあるでしょう」
海外ではすでに長年の使用実績があるフルミスト。日本でも、今後は従来の注射型と並ぶ選択肢として、さらに広がっていく可能性がある。大切なのは「注射をしなくて済む」という手軽さだけで判断しないこと。効果や副反応、子どもの体質、そして費用。それぞれの特徴を知ったうえで、家庭に合った予防接種を選びたい。
牧 潤二(まき・じゅんじ)
1950年、香川県生まれ。東京経済大学経済学部卒業。1982年にフリージャーナリストとして独立し、「牧事務所」を設立。医療保険制度や診療報酬、在宅医療、医療政策など幅広い分野で取材・執筆活動を続ける。著書に『在宅医療サービス徹底活用ガイド』『詐病』など。日本医学ジャーナリスト協会会員。