■出来が良すぎるからこそ?
よもやの1週間で、珠の妊娠から早産による我が子の死、夫婦で北海道への移住まで描くスピード展開。しかし、スピード展開ではありながらも、描写が丁寧なため、短いシーンでも確実に心に響く週だった。展開が早いのは序盤からのことなので、今さらでもあるし、それが火曜、水曜で視聴率を下げた原因ではないだろう。
思い当たるのは、モデルの宇野千代の生涯がドラマチックすぎること。東京編はクセのある登場人物揃いで刺激があったが、喜びから悲しみまでの落差が激しく、視聴者の心を揺さぶりすぎたのかも。それは、木曜からの札幌編は良い人に囲まれた穏やかな雰囲気。いかにも朝ドラという感じで、再び視聴率を14%台に戻したことでもわかる。
しかし、この穏やかな日々が長く続かないことは、多くの視聴者がわかっている。保が良い人であればあるほど、その先に待つ別れがチラついて、とても落ち着いて見ていられない。それに加えて、金子大地が演技巧者のうえ、演出が丁寧だからなおさら、心がかき乱されてしまう。
そのため、X上では、《光が差したと思ったら、すぐにどん底に突き落とされる何かが起きるんだよね…それが繰り返されてる朝ドラなんだよね…ブラッサムって。だから、油断禁物なんだよね》《若い夫婦が北海道に移住し周りの優しさによって傷を癒していく。問題はこれが宇野千代の物語ベースということだ!》などの指摘が。
岩国編、東京編、北海道編と続く丁寧な生活描写など、ドラマとして『ブロッサム』は素晴らしい出来だ。しかし、朝から見るものとしては、そぐわないかもしれない。よく出来ているからこそ、展開によっては見るのがツラくなり、視聴者が離れてしまうことも。朝ドラという特殊な放送枠なら、十分に考えられる。
宇野千代の生涯を考えると、今後もジェットコースターのような展開が予想される。これから一日が始まる慌ただしい朝の放送で見るより、自分の都合に合わせ、心を落ち好かせて見られる、NHKの配信サービス「NHK ONE」のほうがいいかもしれない。
(ドラマライター・ヤマカワ)
■ドラマライター・ヤマカワ
編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん』。ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。