■穏やかな表情の中に潜む暗さの表現が秀逸
若林は、祖母の鈴代(白石加代子/81)と一緒にいるときは、穏やかで優しい。若林が暗い顔をするからと、テレビを片づけたリビングのソファで、一緒におやつを食べる優しい時間があった。このときの若林は、少しホッとしたような柔らかさの中に悲しみが混じったような寂しさがあった。
また、クレープ屋の小さな舞台を必ず見に来てくれていた女性ファンと話すときは、とげとげしさがなくて親しみやすい雰囲気がある。でも、ぼそぼそと話しているのだろう、テンションが高まる様子はあまり感じられないのが、なんとも、もどかしい。気持ちも目線もデフォルトが斜め下だから、どうしても暗さが抜けないのだ。少し前かがみな姿勢、丸まった背中が特徴で、少し引きつったような表情で笑うのが、とてもうまい。
まるで本人のようでもあるが、ふだんの高橋がバラエティ番組やトークで見せていた、穏やかな雰囲気や屈託のない笑顔とはまるで別人だ。だけど、これをごく自然に演じているのがすごい。そしてこれは、春日の堂々たる態度や実のない返答に対する、激しい怒りや焦りといった感情と対比させている。この演じ分けを、絶妙なラインで分けていることを意識してドラマを見ると、若林の魅力がより増して見えてくる。
山里としずちゃんが『Mー1』で大活躍し、爪痕を残していたのを目の当たりにした若林が、今後どう成長していくのか。変化の時が待ち遠しい。(文・青石 爽)