■3分弱スピーチの原稿を自分で書き上げた

 そして、磯村と『ゴースト』を語るうえで、いまだに伝説と名高いのが、2017年公開のスピンオフ作品『ゴースト RE:BIRTH 仮面ライダースペクター』のラストシーンで披露した、眼魔世界の住民に向けてのスピーチだ。

 非常に長いので割愛するが、アランは青空の美しさ、命の儚さとそれゆえの美しさ、そして“友”の大切さを熱弁。大帝の息子ではなく、一人の人間として、皆と友達として歩む決意を力強く語る――という、3分弱のスピーチを行なっていた。

 スピーチの演技そのものも非常に高く評価されているが、驚くべきはスピーチの原稿を書いた人物だ。同作の高橋一浩プロデューサーの提案により、磯村本人が書き上げたのである。

《台本にあったセリフをすべて自分の言葉に書きかえて撮影に臨みました。1年半演じてきて、アランのことは自分にしかわからない……と自信を持ちながら、頑張ってセリフを書きました。あの演説シーンがアランとしての集大成。それまでずっと演じてきたアランの思いをすべて出し尽くせたと思っています。僕を信じて任せてくださった高橋さんに感謝ですね》

《若い時代に取り組んだ、とても大切な仕事です。撮影中、監督から厳しく言われたり、演技がうまくいかなかったりしましたが、失敗や挫折を感じ、壁にしっかりとぶつかる時期があの年齢であったこと、しかもそれが「仮面ライダー」の現場だったことに幸運を感じています》

 と、磯村は4月1日に『マイナビニュース』のインタビューで語っている。『ゴースト』のライダーたちの決め台詞を拝借するなら、命を燃やし、心の叫びを聞かせ、生き様を見せるべく書き上げたのだろう。

 若手時代から、どこまでも深く役に入り込む才覚を発揮していた磯村。30歳を迎え、これからどんどん成長していくに違いない――。