■若林の可能性を信じ続けた人たちの想いが結実
オードリーの“ずれ漫才”は、2年続けたことで練りこまれて評価が高まっていた。若林の世間とのずれ、春日の人としてのずれが、自分たちになじんで磨きがかかっていたのだ。
そして臨んだ2008年の『M-1』の敗者復活戦。オードリーの漫才を、ドラマでもフルバージョンで収録して放送したことに感激した。演じる高橋と戸塚の息ピッタリの漫才は、再現度も高く素晴らしいものだった。何度、練習をしてこのシーンに臨んだのだろうと涙が出てきた。
敗者復活戦を勝ち抜き、決勝の会場に向かうタクシーに乗り込む時、春日が若林に問いかける。「若林さん、あたし春日してましたか」と。即座に「春日より春日だったよ」と伝える若林。この2人の会話は、演じる高橋と戸田の濃密な関係を感じさせる、ごく自然なものだったのがとてもいい。
オードリーが『M-1』の決勝に進んだことで、これまで若林を支えて応援してくれた人たちの想いも結実した。自宅では、ばあちゃんと家族が歓声をあげて喜び、橋本は現場にギリギリで駆けつけて「面白かったです」と伝えた。彼女の若林を信じて応援してきた気持ちは本物だったし、それを痛いほど分かっていたのは、誰でもない若林だ。
先輩芸人・谷ショーこと谷勝太(藤井隆/51)の言うように「いばらの道」ではなく「足つぼの道」にしたのは、漫才への情熱があったから。この不屈の精神で突き進む熱い気持ちを、いつまでも見ていたい。(文・青石 爽)