■高橋海人の俳優として覚悟を決めた芝居に酔いしれる
日テレドラマ公式YouTubeの再生回数1億回突破の快挙は、ドラマ最終回に花を添えるニュースだ。再生回数がダントツで1位なのは、「オードリーの敗者復活戦」ショート動画となっていて、当時の漫才ネタを、そのままに見ることができる。だけど、これは物まねではなく、若林を演じる高橋と、春日を演じる戸塚純貴(30)の芝居だ。ドラマ撮影時から培ってきた、役への理解と積み重ねてきた芝居があったからこそ、完成したものだ。
現実に生きている著名人を演じるのは難しい。それがレギュラー番組を持つ有名芸人ともなれば、誰が演じようとも斜に構えた見方をするファンもいただろう。だけど、芝居を見れば、相当な覚悟を持って取り組んでいることに驚きと感動があったはずだ。この芝居を、もっとたくさんの人に、第1話から見てもらいたかったと残念に思う。
若林を演じていた高橋からは、本人感がにじみ出ていたと言っていいだろう。高橋はこれまでさまざまな人物を演じてきたが、これほどまでに役に没入していることがあっただろうか。第4話で、先輩芸人・谷ショーこと谷勝太(藤井隆/51)に「君、あれだね。みんな死んじゃえって顔してるね」と言われていた頃は、高橋自身のメンタルが心配になる程に落ち込んだ芝居が続いていた。
だが、第11話で見せていた表情には穏やかさがあった。高校時代から30歳代といった長期間を演じたことも素晴らしい経験になっただろう。これからも、いろいろな役に挑戦して、わたしたちを魅了してほしい。胸が熱くなるようなヒューマンドラマで、高橋には縁のなかった人生を生きる姿にまた酔わせてほしい。次の作品も、心から楽しみにしている。(文・青石 爽)