■「道楽息子」の万太郎を寿恵子が支える

 牧野富太郎は20歳で研究の心得『赭鞭一撻(しゃべんいったつ)15か条』を提唱しているが、その1つに「吝財者(りんざいしや=ケチ)は植学者たるを得ず」というのがあった。事実、研究にカネを惜しまなかったのだが、実家の酒蔵が経営不振に陥った結果、壮絶な貧乏生活に突入。

《常に借金取りに追われ、家賃が払えず引っ越したのが三〇回以上、子供たちにお弁当も持たせてやれない。それでも妻の壽衛(すえ)さんは「うちには道楽息子がいるもので」と、苦境も厭わず、富太郎を支えたそうですね》

 と、牧野富太郎を深く研究している作家の谷村鯛夢氏は、3月30日配信の『ブックバン』にて解説している。東大も、1度追い出されている。

「万太郎は天才肌で、よく言えば植物に一途ですが、悪く言えば頑固で、植物以外はすべて二の次なところがある。妻の寿恵子に対しても愛情は持っているものの、植物や研究優先で振り回していますからね。現に、第68回ではそれで寿恵子がちょっとイラッと来て柱を殴っているわけで……それでも、史実のように万太郎を支えるのでしょう。

 この“天才肌の主人公を支える苦労人の配偶者”というのは、性別こそ逆ですが、朝ドラでは『スカーレット』を思い出しますね。こちらも、ずっとパートナーを支えようとして、苦しんでいたキャラクターでした」(前出のテレビ誌ライター)