■「あれ、アイツどんなキャラだっけ?」が芝居の転機に

――『や団』のコントは、「ノリがアメリカのシリアルキラーなのよ!」や「人が水たまりで溺れるとこ見せてやるよ!」とか、ネタに強いパワーワードが入っているのが印象的です。これは、どうやって編み出しているんですか?

本間 なるべくライブをたくさんやって試すしかないです。最初は自分たちで面白いセリフを考えて、それをライブにかけてウケが弱いから言い回しを変えたりとか。やり続けて、研ぎ澄ましていく感じです。

――実践あるのみ、ということですね。本間さんがネタを書かれているとのことですが、伊藤さんや中嶋さんに対する演技指導は、どのような感じでしょうか。

本間 各々にまず本を読んでもらって、理解してもらう感じです。

中嶋 けっこうロング(伊藤)は、演技指導というか、“こうした方がいい!”という主張はあるよね。

伊藤 全員で聞いていて、“こっちの言い方がいいんじゃない?”みたいにみんなで言いあったりしてやっています。

本間 そうですね、けっこうロングにチェックはしてもらいます。僕は驚いている表情とかで勝負するので目を見開いたリアクションとかが多いですけど、意識しないとすぐに細目になっちゃう。そういうところは注意しています。

や団(左からロングサイズ伊藤、本間キッド、中嶋亨)

――コント中の演技について、他の芸人さんなどから影響を受けたことはありますか?

中嶋 バイきんぐの西村瑞樹さん(46)が、新ネタをやる前に舞台袖で、急に自分のキャラを忘れて「あれ、アイツどんなキャラだっけ?」って言っていたんです。自分のキャラクターを「アイツ」って呼んでいた時にしっくりきて。そこから僕も参考にして、たとえば傘で人を刺すキャラのときも、「アイツ」って思うようにしています。「アイツだったら、黙って刺すだろう」「アイツだったら、最初の会話もテキトーに“おぉい!”とかだろう」など、すごくイメージが湧きました。西村さんの「アイツ」がきっかけで。

――完全に“別の人”ですか。

本間 西村さんはそうです。演技が上手いから。そういえば前に一度、「お前は笑わせようとしてしゃべっている」って言われて。「笑いなんていらねぇんだ。そいつならどう言うかだ」って叱られたことがあります。

――おお!「笑いはいらない」と言われて、どう思いましたか?

本間 ……笑いはいるなって思いました(笑)。

(大爆笑)

本間 そりゃ思いますよ!「笑わせなくていいんだよ」って、そこはちょっと言いすぎだなと思いました(笑)

――『キングオブコント』では、同大会初参戦時からずっと決勝戦に行けないことについて「毎年ちゃんと悔しくなる」と分析していたのが印象的でした。昨年は3位。素晴らしい結果でしたが、優勝できなかった。例年の「悔しい」とは違いましたか?

本間 やっぱり準決勝で負けるとすごく悔しいですけど、決勝で優勝を逃した時は全然違いました。優勝はできなかったけど、3位になれたし。反響もすごくあって。

 僕らの中の最高の2本を出して優勝できなかったガッカリ感はありつつ、反響はたくさんあって環境も変わったから、喜ぶべきところもたくさんありました。だから、前年までとは違う1年になりました。

――アルバイトも、伊藤さんと中嶋さんは週6から週1に。本間さんは、思い切って辞めたんですよね。

伊藤 そうです。僕は水道メーターの検針をしています。人様の家で、庭やドアにある水道メーターの針を読んで、印字されてくるお知らせ票をポストに投函するのを、1日150軒くらいやっています。本間も、同じバイトをやっていました。

本間 同じ会社の、違う営業所でやっていました。なので直接会うことはありませんでした。

中嶋 僕は週1でラーメン屋で4時間働いてまかないを食べるのが理想の人生なので。これからも、できる限りまかない食べに行きたいです(笑)。