■「17歳のとき、学ランを着たままフリップネタを握りしめて大阪の吉本興業の本社に行ったんですよ」
――どんな会社ですか?
Enishi 携帯電話を売るイベント会社で、ステージで自分ないしほかの芸人さんがパフォーマンスして集客して、アプローチをかけていくという会社です。これが軌道に乗って、一応「売上日本一」みたいなのに何度もなって、お金が入ってくるようになったし、会社は大きくなっていきました、芸事はまったく軌道に乗らないのに(笑)。
――経営の才能があったのですね。お金がまったくない人生で、急に入ってくるようになり、でも、完全に経営者になるという道には進まなかった。
Enishi 思わなかったんですよ。でも、別にお笑いが好きなわけでもないと思うんですよね……。
――どういうことですか……!?
Enishi たぶん、意地ですね。17歳のとき、始業式の日、母親に「学校行ってくる」と言って、学ランを着たままフリップネタを握りしめて大阪の吉本興業の本社に行ったんですよ。そこでは当然、警備員さんに止められるんですが、その際、「とにかく偉い人に僕のネタを見てもらいたい」と伝えたんです。
――すごい行動力!
Enishi そしたら警備員さんが「吉本の劇場でライブをやっているから、そこに行け」と言われて。その通りに行ってネタ見せをしたんです。そしたら、「面白くないから就職しろ」と言われました。
その言葉から20年近くが経ちましたが、たぶん、今の今までこれをずっと引きずって、自分が面白いことを証明するために続けているんだと思います。それで大道芸をやったりマジシャンをやったり、今は変面をして、ずっともがいている感じですね。
――もがきつつも世界で、AGTで芽を出しました。17歳のEnisiさんが今のEnishiさんを見たら、どんな言葉をかけるでしょう。
Enishi たぶん怒ると思いますよ。「諦めずに漫才をやれ」と。漫才で一番になるためにこの世界に入ったのにと。たくさん喋りたいのにひとこともしゃべらないパフォーマンスをやっているし、顔を売りたいのに顔を隠していますからね(笑)。
――たしかに……。
Enishi やっぱり、面白いことを言って楽しませて、見た人が家に帰って「Enishiってヤツがいてさ、今度一緒にそいつの漫才見に行こうよ」と言ってくれるのが、17歳の僕が思い描いていた理想なんです。
――それがあるから、これからも立ち止まらずに前を向けるような気がします。
Enishi そうですね! ほんとうに、それです。
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AGTでの活躍、タッグを組む奥さまとのこと、苦労時代など赤裸々に語ってくれたEnishiさん。今後は世界を股にかける活躍を目指すという。今後の彼の大活躍には大注目だ!
えにし 1986年7月24日生まれ、大阪府堺市出身。100companyとエージェント契約中。中国の伝統芸「変面」を独自進化させたフェイスチェンジで、アメリカのオーディション番組『アメリカズ・ゴッド・タレント』シーズン18に出演。変面技術と顔ハメを駆使して審査員のモノマネフェイスチェンジを行い、審査員4人中3人が「◯」を投じた。大人気トークバラエティ番組『まつもtoなかい』(フジテレビ系)にも出演するなど、国内での注目度も増している。