■ドラマ評論家『VIVANT』の二宮は「違和感」
しかし、『VIVANT』での二宮について、『週刊新潮』(新潮社)でドラマ評を手掛ける吉田潮さん、『みんなの朝ドラ』(講談社)などの著作がある木俣冬さんに話を聞いたところ、両者から出てきたキーワードは「違和感」だった。
『VIVANT』で二宮演じるノコルは、一見無表情で何を考えているかわからないキャラクター。だが、養父でテロ組織「テント」のリーダー・ベキ(役所広司/67)の実の息子こそが自衛隊の諜報部隊「別班」の乃木憂助(堺雅人・49)であることが発覚。ノコル自身は実の兄を亡くした過去を持つという複雑な役どころだ。
「二宮さんは本来、顔も声も柔らかくて、敵を作らないようなフツーのお兄ちゃん――“不甲斐ない”イメージが本当に似合うんですよね。だけどキレ者の役をするようになってから違和感、背伸び感が出てきていて、今回も“なんでその役をニノが?”という気持ちは正直ありました。でも福澤克雄監督が二宮さんの配置を考えたとき、そこしかなかったんだろうなと。
今はベキ(役所)の右腕になってるけど、実の息子として乃木(堺)が出てきちゃったから、今後ベキを裏切るかもしれない。ベキを撃つとか、謀反でも起こして殺されるとか、そこまでしてくれたら面白いなと思います」(吉田さん)
木俣さんが、二宮の「違和感」の正体を考察する。
「二宮さんは、古き良き昭和の時代の、日本男児の象徴を演じられる人だったんです、ずっと。戦争や貧困などの辛いことや理不尽なことを耐え忍びながら、でも生きていくみたいな。どちらかというとアッパークラスではない庶民の側にいて、ちょっと屈折している人を演じさせたら抜群だった。
それが、今回は日本の価値観とは違う異国で生まれ育った役。我々が期待する“日本人らしさ”がそこにはない。
『VIVANT』は、みんなが見たい堺さん、役所さん、阿部さんを描いているドラマ。そうしたなかで、二宮さんだけが新機軸に挑まされている感じがします。だから、若干違和感を覚えてしまうのかもしれません」
そして木俣さんも吉田さん同様、二宮の“裏切り”を期待する。
「新機軸とはいえ、ノコルの屈折した少年感は二宮さんならでは。でも今までの利他的な役どころとは違う、“実は黒幕”パターンだったら面白いですよね」