■『VIVANT』は考察ドラマの集大成! 今後に続くドラマとは?
その裏には、日本テレビで2019年に放送され大ヒットを記録した『あなたの番です』以後、ブームと化していた考察ドラマの集大成としての作り方があったという。
「これまでの考察ドラマといえば、犯人探しに力点を置いた物が主でした。でも『VIVANT』は、その人物の出自を辿るような、幅と奥行きのある考察を多くの視聴者が行なった。
何よりも福澤監督を始めとする制作陣が、面白いと思ったものをどうにかして形にしようという根性、努力、ワクワクしている感じが物語にちゃんと出ていたんだと思います。視聴者はそこに引っ張られましたね」(吉田さん)
木俣さんも今作が“考察ドラマ”として成功した要因に、SNSとの融合を上げる。
「考察モノはマニアックになりがちな分野。そこを『VIVANT』では公式SNSで、注目ポイントやヒントをどんどん出してわかりやすく道筋を示し、間口を広げた。誰でも参加できるクイズ番組のようなスタイルで視聴者を喜ばせる工夫がなされていたと思います」
その一方で、木俣さんは、考察ドラマブームが今後も続くかは未知数だと明かす。
「豪華俳優陣も揃え、視聴率も絶好調だった『VIVANT』。この影響を受けて、今後しばらくは、考察モノの制作に各局当分、力を注ぐでしょう。けれど、そのブームが長いかは未知数。考察モノがどんどん研ぎ澄まされていったら、もはや“物語”じゃなくて、ドラマふうクイズ番組みたいになってしまう。
それに、『VIVANT』が考察ドラマの集大成のようになった以上、今後に続く作品は『VIVANT』との比較を受け、大苦戦が予想される。考察ドラマが悪いわけではなく、集大成的な作品が放送されたことで、考察ドラマブームには一区切りがつきそうです」
2人のドラマ評論家からも考察ドラマの集大成として、「大作」との評価を受けた『VIVANT』。今後、この作品を受けて、各局ではどのようなドラマ作りが期待されるのか。
「最近は原作ありきで、小さくまとまったドラマが多いんですよね。これで他のドラマ制作チームも、ちゃんと面白いオリジナル作品を作ろう! という気合いにつながればいいなと思います」
と吉田さんがその胸の内を明かせば、木俣さんは、
「“この謎の答えはこうです”、”構造はこのように作り上げています”というような、むき出しの答えと設計図を次々に見せられるものは”物語”なのか疑問です。答えのないもの、どうやって作ったのか仕掛けがわからないものを楽しみたいという思いもあります。
ただ、“タイムパフォーマンス”という概念が流行る現代では、みんなすぐに一つの答えを求めたがる。考察ドラマブームの背景にはそんな理由があった気もします。考察ドラマがあってもいいので、今後は、その反動で脚本をじっくり楽しめて、答えがなくても楽しめるドラマ作りの二輪になるのが健全なのではないでしょうか」
ドラマの放送が終了してなお、謎を残し、令和のドラマ界に一石を投じた『VIVANT』。後を継ぐ作品は生まれるのか、それとも新機軸が『VIVANT』後のドラマ界の主体となっていくのか――。